ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
私は子どもの頃、「たべっ子どうぶつ」というお菓子をよく食べていました。
株式会社ギンビスから発売されているロングセラー商品で、どうぶつを象った形のビスケットは多くの方も知っていると思います。
ビスケットにはその動物の名前が英語で書かれています。
また、包装箱の裏側には英語以外の言語でも動物の名前が書かれており、1箱で複数言語を学ぶことができるのでお得です。
私はお菓子を食べながら、それら動物の外国語名を飽きずに眺めていました。
当時覚えた外国語名は今でも記憶に残っています。
動物たちのフランス語名
特に印象に残っているのがフランス語の動物名でした。
動物名はカタカナでも表記されているので、それを頼りにフランス語を読んでみるのですが、当時はフランス語のつづりと発音の乖離が理解できませんでした。
「猫」はフランス語で、"chat"[シャ]。最後"t"の音はなぜ読まないのでしょう?
何故「イルカ」は"dauphin"と書いて[ドーファン]で、「キツネ」は"renard"で[ルナール]と読むのか?といった具合です。
今ではフランス語の発音規則を覚えているので何ということは無いのですが、当時の私には分からないことだらけでした。
それもあってフランス語は印象に残りやすかったのではと思います。
フランス語は読まれない文字があるため、実際の発音に対してつづりが長い単語が多いと思います。
とりわけ、たべっ子どうぶつで印象的であったのが「コウモリ」です。
"chauve-souris"という名の意味と由来とは?
フランス語で「コウモリ」は、"chauve-souris" [ショヴ-スリ]です。
発音に対するつづりの長さもさることながら、2つの単語で構成される点が斬新です。
子どもの頃は"chauve-souris"を見て、何とも長い単語だなくらいしか思わなかったのですが、時を経て再びこの単語を目にする機会が訪れました。
といっても、"chauve-souris"の後半部分"souris"についてです。
フランス語の単語集をぱらぱらめくっているとき、"souris"という単語を目にしました。
子ども時代に覚えた"chauve-souris"が思い返されます。
ところが"souris"は「ネズミ」という意味だと載っているのです。
あれ?"souris"という単語は、「コウモリ」で使われていなかったかな?
不思議に思って調べてみますと、"chauve-souris"はやはり「コウモリ」でした。
ということは、フランス語で「コウモリ」は「"chauve"のネズミ」のような表現であると推測されます。
では今度は"chauve"を調べてみましょう。すると何と「禿げた」という意味の形容詞だというのです。
何故「コウモリ」は「禿げたネズミ」なのか?
当の「コウモリ」からしてみれば「禿げたネズミ」呼ばわりは心外でしょう。
何故このような命名となったのでしょうか?
こういう場合、手近で無料かつすぐに調べられるツールとして英語版wiktionaryがお勧めです。
英語版wiktionaryの語源の項には、以下の解説がありました。
Used as early as the 8th century in Gallic Late Latin calva sōrex (“bald mouse”); the first element ("bald") may originally be an alteration of Vulgar Latin *cawa (“crow”). Equivalent to chauve (“bald”) + souris (“mouse”).
早くも8世紀には、ラテン語でも「禿げたネズミ」を表す”calva sorex”という表現で登場するそうです。
ただ「禿げた」というのは、どうやら俗ラテン語で「カラス」を意味する”cawa”という単語が置き換えられた可能性があるそうです。
「カラスのようなネズミ」ということでしょうか。
ネズミがカラスのように黒い色で羽(翼)を持った姿を「コウモリ」のイメージに重ねたということであれば、何となくわかるような気がします。
また、フランス語版wiktionaryでも調べてみると、語源に関して以下の解説がありました。
(VIIIe siècle) (Gloses de Reichenau) Du bas latin calvas sorices (pluriel), altération sous l’influence de calvus (« chauve »), du bas latin cava sorex, formé de *cava (« chouette », voir cavannus) et sorex (« souris »), littéralement « chouette-souris ». Le mot a éliminé le classique vespertilio en Gaule du Nord.
英語版とは異なり、フランス語版では"chauve"の由来はラテン語"cava"であり、その意味は「フクロウ」であるとしています。
「フクロウのようなネズミ」ということでしょうか。
「フクロウ」は夜行性のイメージから、暗闇の中で活動的になる「コウモリ」のイメージに重ね合わせたのかもしれませんね。
英語版とフランス語版では由来に対する見解が異なっているものの、いずれにせよ現代のフランス語では「禿げた」という意味の"chauve"になってしまったというのですから、当の「コウモリ」からしてみたら少しショックかもしれませんね。
フランス語における2種類の「ネズミ」
ちなみに"souris"は「ネズミ」の意味であると上で述べましたが、フランス語には"rat"[ラ]という単語も「ネズミ」を意味します。
両者の違いですが、"souris"が小型でかわいらしい「ネズミ」に、対する"rat"が大型で不潔な「ネズミ」に対して用いられます。
英語でも「ネズミ」は"mouse"と"rat"という2通りの表現があります。
フランス語"souris"が英語"mouse"に相当します。"rat"は英語もフランス語も同じつづりですね。
ディズニーのキャラクター、ミッキーは「マウス」ですね。
また、パソコン操作に使う端末も「マウス」で、ネズミのような形が名前の由来だそうですが、"rat"と言わないのも上の理由から納得ですね。
フランス語でもパソコンのマウスは、"souris"と呼ばれているそうです。
日本語では「ネズミ」という1通りの単語しかなく、「ハツカネズミ」や「ドブネズミ」などのように区別されますが、文化が異なれば名詞の形で区別されるということですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。子供の頃に覚えていたフランス語の「コウモリ」について、調べてみました。
「たべっ子どうぶつ」は今でももちろん販売されています。今度、外国語学習の息抜きに久しぶりに食べてみようと思います。