ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
この時季の風習の一つとして、お中元がありますね。
日ごろ世話になっている方、仕事上の付き合いがある方などに「贈り物」をする風習です。
私が子供の頃は、家にカルピスやサラダ油などが詰まったギフトセットが届けられることがありました。
とはいえニュースでも時々取り上げられるようですが、年々その規模は縮小傾向にあるそうです。
私自身も大人になった今、個人的にお中元を贈ることはありません。また勤務先においても企業・顧客の間でそうした贈答はしていません。
ということで(?)今回はそんな「贈り物」、外来語としても定着している「ギフト」という単語について考えてみたいと思います。
英語"gift"の意味、語源とは?
英語"gift"は「贈り物」という意味の、基本単語ですね。
冒頭で述べたように、「ギフト」という表記でも浸透しています。
この語源は、"Online
Etymology Dictionary"によると以下の通り解説されています。
mid-13c. "that which is given" (c. 1100 in surnames), from a Scandinavian source such as Old Norse gift, gipt "gift; good luck," from Proto-Germanic *geftiz (source also of Old Saxon gift, Old Frisian jefte, Middle Dutch ghifte "gift," German Mitgift "dowry"), from *geb- "to give," from PIE root *ghabh- "to give or receive."
動詞"give"「与える」と形も似ている通り、「与えられたもの」がルーツとなっているようです。
ドイツ語"Gift"の意味とは?
ところで、英語と同じゲルマン系のルーツを持つドイツ語にも同じつづりで"Gift"[ギフト]という名詞が存在します。
ただし、この単語を英語"gift"のように「贈り物」という意味で用いることはできません。
ドイツ語では何と「毒」を意味する単語なのです。
ドイツ語"Gift"のルーツとは?
英語版wiktionaryによれば、以下のように解説されています。
The word has been used as a euphemism for "poison" since Old High German, a semantic loan from Late Latin dosis (“dose”), from Ancient Greek δόσις (dósis, “gift; dose of medicine”). The original meaning "gift" has disappeared in contemporary Standard German, but remains in some compounds (see Mitgift).
元の意味は「贈り物」であったのが婉曲表現として使われるようになり、現代ドイツ語では「毒」という意味に取って代わったようですね。
また、ラテン語"dosis"「服用」やギリシャ語からの意味借用とあります。
意味借用とは、別の言語から意味だけを借用することを指します。意味だけを抜き出してくるので、表現する為にはもともとある単語を用いることになります。
今回の例で言えば、ラテン語から「服用」という意味だけ抜き出して、もともとあった"Gift"にその意味を担わせたということになります。
ルーツとなったラテン語、更にはギリシャ語も元は「与えること」が原義であったとのことから、"Gift"が意味借用を担ったというのも頷けます。
とはいえ、元は「(薬の)服用」からの意味借用であったのが、かえって「毒」を意味する単語となっているのは不思議ですね。
ドイツ語で「贈り物」は何という?
さて、ドイツ語の"Gift"は原義はともかく現代では「贈り物」という意味では用いられないことがわかりました。
では、「贈り物」をドイツ語で何と表現したらよいでしょうか?
その場合は、"Geschenk"[ゲシェンク]を用いましょう。
こちらは「贈る」という意味の動詞"schenken"の名詞形です。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は「贈り物」をテーマに、ドイツ語"Gift"について調べてみました。
日本語には、本来は敬意を込めた人称表現である「貴様」が現代ではその意味が無くなるどころか行儀の悪い表現となってしまった例がありますが、外国語においても時代とともに変わる事例があるということですね。
ドイツ語は英語とルーツが同じこともあり、似た単語を見つけるとその意味を英語から類推してみたくなりますが、今回のような例もあるので注意が必要です。
相手に「毒」を贈ってしまうことが無いよう、単語の意味はしっかり調べておきたいですね。