フランス語"visiter"「訪ねる」の用法にご用心!

2021/09/17

フランス語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

ヨーロッパの言語というのは、地理的および歴史的な経緯から、言語間で類似性が見られます。

例えばイタリア語、フランス語、スペイン語・・・等は、ローマ人の公用語・ラテン語を共通のルーツに持ち各地域で発展した言語であることから、語彙や文法が似ています。

このグループは特にロマンス諸語と呼ばれます。

一方で、英語やドイツ語、オランダ語・・・等はゲルマン語派というグループに属し、共通のルーツを持ちます。

ところが英語に関しては、その歴史の中でフランスからの語彙の流入がかなりあり、現代ではむしろフランス語を経由したラテン語ルーツの語彙がかなり多いようです。

そのため英語とはグループが異なるとはいえ、ロマンス諸語を学ぶ際には少なくとも語彙の面で類似性を見つけることができます。

ただし、その用法まで全く同じかというと落とし穴にはまってしまうので注意が必要です。

今回は動詞"visit"について、ルーツや関連する語の用法で注意すべき例を紹介します。


動詞"visit"の用法とルーツとは?

まず、英語"visit"は、基本的な動詞であり皆様も早々に習った単語だと思います。

意味は「訪問する」ですが、もう少し深堀りすると他動詞として目的語を伴った用法がメインです。

例)I visited Paris. / I visited my friend yesterday.

 (私はパリを訪ねた。/ 私は昨日、友達を訪ねた。)

例のように目的語には場所や人が置かれ、「(場所を、人を)訪問する」といったような使い方ですね。

※目的語を伴わない自動詞としての用法や、名詞「訪問」といった用法もあります。

この"visit"はラテン語にルーツを持ちフランス語を経由して英語にもたらされています。その語源はOnline Etymology Dictionaryによると、以下のように解説されています。

c. 1200, "come to (a person) to comfort or benefit," from Old French visiter "to visit; inspect, examine; afflict" (12c.) and directly from Latin visitare "to go to see, come to inspect," frequentative of visere "behold, visit" (a person or place), from past participle stem of videre "to see, notice, observe" (from PIE root *weid- "to see").

(出典:Online Etymology Dictionary)

英語"visit"はフランス語"visiter"に、更にラテン語"visitare"にルーツがあります。

ラテン語"visitare"は動詞"videre"「見る」から派生した"visere"に、"frequentative"がついた形だそうです。"frequentative"とは文法用語で「反復相」等と訳されるようですが、ラテン語においては繰り返しや強調を表す形とされています(英語版wikipediaより)。

引用を読み解くに"visere"にも「(人や場所を)訪問する」意味があるとのことですが、現代には"frequentative"の形が残っていったということですね。


ラテン語"visitare"から派生した単語たち

冒頭で述べたように、ラテン語をルーツに持つ言語はフランス語の他にもあります。

他の言語で派生した形を以下に示します。

 イタリア語  visitare [ヴィジターれ]

 フランス語  visiter [ヴィジテ]

 スペイン語  visitar [ビシターる]

 ポルトガル語 visitar [ヴィジターる]

 ルーマニア語 vizita [ヴィジタ]

つづりや発音で微妙な差異はあれど、類似性は一目瞭然ですね(ちなみに、上で挙げた形は動詞の不定形です)。

またその用法も基本的には同じです。意味は「訪問する」であり、基本的には他動詞として目的語に場所や人をとります。

ただし例外があり、フランス語"visiter"の用法には注意が必要です。


フランス語"visiter"の用法

他の言語と同様に、フランス語の動詞"visiter"も「訪問する」という意味で用いられます。

しかし他の言語と異なる点は、目的語に置くことができるのは場所のみであり、通常は人を置くことはしません。

英語版wiktionaryに以下の注記がありました。

Visiter is only used for places.

またフランス語の辞典を発行、改訂しているAcadémie françaiseHPには以下のように解説されています。

Le verbe visiter s’emploie, dans certaines tournures figées, avec, comme complément d’objet, un nom de personne. Dans ce cas, les personnes désignées sont en situation de souffrance et leur rendre visite est une marque de compassion.

(出典:[Dire, Ne pas dire] Visiter son oncle

病気の人、貧しい人…など苦しんでいる人を思いやって訪問する場合のみ人を目的語にできる用法があるようです。

"visiter"のルーツが、ラテン語"vedere"「見る」であることを考えると、「見舞う」というニュアンスでしょうか。

 例1)Je visite Paris.「私はパリを訪問する」

 例2)*Je visite mon ami.「私は友達を訪問する」

この場合、例1は目的語に"Paris"「パリ」という場所を置いているので文法的にも正しい文章ですが、例2は目的語が"mon ami"「私の友達」という人を意味する単語のため、ネイティブにはしっくりこない表現となります。


人を目的語にする場合は?

では、フランス語で「人を訪問する」という表現はどのようにすればよいでしょうか。

先ほどのAcadémie françaiseのHPによると"rendre visite à + "という形にします。

例)Je rends visite à mon ami.「私は友達を訪問する」

この場合の"visite"は名詞形です。続く"à"は前置詞で、英語の"to"等に相当します。

先頭の動詞"rends"(不定形"rendre")ですが、「返す」や「~にする」といった意味があるようですが、今回は"rendre visite à"で「訪問する」という熟語表現になるかと思います。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は動詞"visit"を例に他の言語と比べてみた結果についてまとめました。

同じルーツに由来する単語とはいえ、その用法は言語によって異なるというのは注意しなければなりませんね。

今回のように基本的な単語で、かつ英語と類似性がある場合であってもしっかりとその言語における用法をチェックするようにしたいですね。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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