ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
当ブログの記事は、常にこの2行で始まります。
語学とは、言語を学ぶことという名詞形なので「語学してますか?」という文は誤りということになるのですが、それはさておき「今日も楽しんで語学してますか?」と聞かれたら、その答えはどうなるでしょう。
肯定なら「はい」、否定なら「いいえ」ですよね。
「いいえ」と答えられた方、更に私が「え!? 楽しんで語学してないんですか?」と聞かれたら、その答えはどうなるでしょう。
肯定なら「はい(楽しんでない)」であり、否定なら「いいえ(楽しんでいる)」になると思います。
英語の否定疑問文への答え方は?
この2つの質問とそれに対する答えを、今度は英語で考えてみましょう。
すると、次の例文のようになります。
例1)Do you
enjoy studying language today, too?
→肯定:Yes I do.「はい。楽しんでいる」
→否定:No I don’t.「いいえ。楽しんでいない」
対して、「楽しんで語学してないんですか?」への答えは次のようになります。
例2)Don’t you
enjoy studying language today, too?
→肯定:No I don’t.「はい。楽しんでいない」
→否定:Yes I do.「いいえ。楽しんでいる」
例2はいわゆる否定疑問文と言われる疑問文ですね。例1と違い、疑問文の中に否定形が含まれていることからこう呼ばれます。
この否定疑問文に対する答え方は、多くの英語学習者を混乱に陥れるやっかいな点かと思います。
日本語「はい。楽しんでいない」というように、肯定の「はい」と否定の「いない」が両立する事は英語では起こりません。そのため、答え方が英語と日本語訳ではあべこべになります。
非ネイティブにとって、こればかりは慣れるしか無いと思います。
フランス語の否定疑問文の答え方は?
ところ変わって、今度はフランス語で考えてみましょう。
質問は、やはり上の例1と例2をそのまま使用します。
例1)Vous vous
amusez aussi à apprendre langue aujourd'hui?
→肯定:Oui je
m’amuse.「はい。楽しんでいる」
→否定:Non je ne
m’amuse pas.「いいえ。楽しんでいない」
フランス語で「楽しむ」という動詞の不定形は、"s’amuser"です。頭の"s’-"は、"se"「自身を」が続く母音"a-"とくっついた形で、直訳すると「自身を楽しませる」となり「楽しむ」と同義になります。
フランス語では"se"(または"s’-")を伴う動詞が多く、特に代名動詞と言われます。この"se"は主語の人称に応じて変化します。
「自分自身を~させる」という表現の仕方は日本語では少し違和感がありますが、フランス語などロマンス諸語では頻出します。
話が逸れましたが、例1を否定疑問文にすると次のようになります。
例2)Vous ne
vous amusez pas aussi à apprendre langue aujourd'hui?
→肯定:Non je ne
m’amuse pas. 「はい。楽しんでいない」
→否定:Si je m’amuse. 「いいえ。楽しんでいる」
否定疑問文への答え方がフランス語と日本語であべこべになるというのは、英語の場合と同様と言えます。
ただ、フランス語の場合は否定疑問文に対する否定の返事が"Oui"ではなく、"Si"となるので注意が必要です。
"Yes"に相当する2つのフランス語"Oui"と"Si"とは?
ということで、フランス語には英語の"Yes"に相当する表現として"Oui"と"Si"の2種類があることになります。
その使い分けは上の例1と例2からも分かる通り、疑問文か否定疑問文かで異なります。
つまり疑問文への肯定(日本語で「はい」)であれば"Oui"を、否定疑問文への否定(日本語で「いいえ」)であれば"Si"を用いて答えるということになります。
この区別は英語には無く、また同じロマンス諸語であるイタリア語やスペイン語にも無いので注意が必要です。
"Yes"に相当するイタリア語は"Sì"、スペイン語は"Sí"と表現します(母音"i"のアクセント記号の向きに注意)。
フランス語の"Si"と形は同じですが、イタリア語とスペイン語では否定疑問文だけでなく通常の疑問文への「はい」という答えにも使います。ややこしいですね。
Wiktionaryによるとフランス語、イタリア語、スペイン語それぞれの"Si"(アクセント記号は省略)はラテン語の"sic"(英語の"so、thus"「そのように」に相当)に由来するとされています。
では、他のロマンス諸語では見られない形の"Oui"はどこに由来するのでしょうか。
仏語版Wiktionaryの語源の項目では、以下の通り解説されています。
(1380) De l’ancien français oïl (1080), forme composée de o « cela » (842), au sens de « oui » (中略), renforcé par le pronom personnel il
対訳:1380年、古フランス語oïlから(1080年)、「はい」の意味で(中略)、人称代名詞"il"によって強調された"o"「それ」の複合形(842年)
参照:fr.wiktionary
古フランス語に由来する表現であり、フランス語でのみ発展した用法と言えそうです。また、この"o"はラテン語の"hoc"「それ」に由来するようです。
人称代名詞"il"は一般には「彼は」を指す三人称単数男性形の代名詞とされますが、対象は「彼」に限らず男性一般名詞を受けたり状況を漠然と示したり、他にも主語の存在しない文で便宜上の主語となったりします。
「それ」という意味から端を発したということで、「それだ!」というようなニュアンスが転じて「はい」になったのかもしれません。
いずれにせよフランス語で独自に発展した"oui"が他のロマンス諸語で見られる"Si"に置き換わって、現代ではメインに使われているというのは面白いですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回はフランス語の否定疑問を学んでいて分かったことを紹介しました。
英語では"Yes"か"No"のどちらかですが、フランス語では通常の疑問文で"Oui/non"に対し否定疑問文では"Si/Non"となって更に厄介です。
繰り返し練習しながら、適切に答えられるようにしたいですね。