ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか。
言葉というのは本当に複雑で、様々な「要素」を元に構築され運用されていることが、外国語学習をすると分かってきます。
ところで「要素」は英語で"element"ですが、この単語の語源に関して面白い説を発見したので、今回の記事で紹介したいと思います。
"Element"を構成する「要素」とは?
そもそも「要素」とは、ある物事を構成する上で不可欠な最小の単位を指します。
相当する英語は"element"ですが、その語源は何でしょうか。
この単語を分析してみると語尾に"-ment"という接尾辞がついています。
接尾辞"-ment"の主な役割は以下の通りです。
Used to form nouns from verbs, the nouns having the sense of "the action or result of what is denoted by the verb".
対訳:動詞から名詞形を作る、名詞形は「(元の)動詞が意味する動作そのものや、その結果」を表す。
(参照:https://en.wiktionary.org/wiki/-ment#English)
以下に、接尾辞"-ment"によって名詞が派生された例を見てみましょう。
名詞"employment"「雇用」・・・動詞"employ"「雇う」
名詞"judgement"「審査」・・・動詞"judge"「審査する」
※日本語の意味は一例です。
では、"element"にもこの公式は当てはまるのでしょうか。
名詞"element"「要素」・・・動詞"ele" 「???」
動詞"ele"という形は英語では見たことも聞いたこともありません。ちなみに英語版wiktionaryで"ele"を検索してみると、古英語で「油(現代英語"oil")」、中英語で「鰻(現代語"eel")」として"ele"が用いられていたようですが、さすがに無関係ですね。
以上のことから、"element"を構成する「要素」に接尾辞"-ment"は相応しくないように思われます。
"Element"の語源とは?
そこで、"element"の語源を遡ってみましょう。
英語版wiktionaryによれば、ラテン語"elementum"に由来しフランス語を経由し英語に取り入れられたとあります。
From Middle English element, from Old French element, from Latin elementum (“a first principle, element, rudiment”)
(参照:https://en.wiktionary.org/wiki/element#English)
それでは、由来となったラテン語"elementum"について調べてみましょう。
すると、種々のラテン語辞書や関連記事で"elementum"の語源に関するいくつかの説があることが分かりました。
古代アルファベットの文字列が由来?
突然ですが、"Elementum"を以下のように分割してみてください。
El – em –
en (– tum)
すると、"El"は L、"em"は M、"en"は Nというそれぞれの文字の音を表していると言えます。
このL、M、Nを順番に読んで"elementum"となった、というのが1つ目の説です。
Perhaps ultimately from L M N, first three letters of the second half of the Canaanite alphabet, recited by ancient scribes when learning it…
対訳:おそらく突き詰めていくと原カナン文字を学ぶ際に古代の筆記者によって引用された後半部分最初の3文字L、M、Nから…
(出典:en.wiktionary)
原カナン文字というのは、ギリシャ文字(α,β,γ…)やラテン文字(A,B,C…)他、現代にも残る各種文字のルーツになった文字と言われています。
この原カナン文字は全部で22文字あり、前半と後半で2分割すると後半最初の3文字がL、M、Nになります。その3文字が「要素」である、というわけです。
ただアルファベットを2分割にしていた痕跡がなく、当時のL、M、Nの読みがel、em、enだったという根拠も乏しいことから信ぴょう性は薄そうです。
ギリシャ語を翻訳するための造語?
続く説は、"elementum"が人工的に造られたのでは?という説です。
Alternatively could be a neologism to translate the equivalent Greek term στοιχεῖον (stoikheîon, “element, letter”) (introduced in the sense of "element" by Plato)…
対訳:あるいは同等のギリシャ語 στοιχεῖον(stoikheîon「要素、文字」、プラトンにより「要素」の意味で紹介された)を翻訳するための造語である可能性があり…
(出典:en.wiktionary)
ギリシャ語は現代でも学問用語のルーツとして英語で用いられていますが(例:"mathematics"「数学」など)、ラテン語を話した当時のローマ人にとってもその影響は大きなものがありました。
ただ「造語」とはいえ、一から全く新しい単語を造るのは厄介です。そこで、既存の言葉をベースに少し形を変えるという、より簡易的な造語法があります。
This neologism would be modelled on and alluding to alimentum (“nourishment”), modified to be a mnemonic for the sequence of letters "L M N"…
対訳:この造語は、alimentum「栄養」を模倣または暗に示し、文字L、M、Nの順番を覚える手助けとなるよう改良された…
(出典:en.wiktionary)
つまり、もともと存在したラテン語"alimentum"の形を変えて造られたのが"elementum"だということですね。
「栄養」もまた生物にとって大切な「要素」の1つなので、採用されたのでしょうか。
また「文字L、M、Nの順番を覚える手助けとなるよう」とありますが、最初の説と同様この3文字の存在は何らか影響していそうです。
確かにL、M、Nは音も似ており、学び始めの人にはその順番を取り違えることがあったのかもしれません。
"Elephant"「象」に由来?
最後の説は、「象」に由来するのではないかというものです。
英語で「象」は"elephant"ですが、"element"と似ていなくはありません。
A further suggestion is that the word may have been derived from an unattested *elepantum for a letter made of ivory (i.e., a toy letter for the purpose of learning to read), an old loanword from Ancient Greek ἐλέφας (eléphas, “elephant”) or its accusative ἐλέφαντα (eléphanta).
対訳:さらなる説は、この単語が古代ギリシア語 έλέφας(eléphas「象」)または対格形έλέφαντα(eléphanta)に由来する古い外来語で、未証明の*elepantum「(象牙で作られた文字の型(読むことを学ぶためのおもちゃの文字))から派生したというものです。
(出典:en.wiktionary)
ただ、この説についても"elepantum"という単語が本当に存在したのか証明はできておらず推測の域を出なそうです。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"element"「要素」という単語の語源について紹介しました。
はっきりとしたルーツは不明ながら、3つの文字L、M、Nの順番がこの単語の「要素」としてあるように思われます。
今後、更なる研究や史料の発見があれば"element"の本当の「要素」も分かる日がくるかもしれませんね。
今後も新たな発見を楽しみに、外国語学習を続けていきたいと思います。