ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
形や意味の似た単語を使い分けることは母国語においても時として難しい場面があるとは思いますが、外国語においては更に注意が必要な点だと思います。
今回は英語における"shade"と"shadow"の違いについて紹介したいと思います。
"shade / shadow"それぞれの意味は?
まずは意味を調べてみましょう。
"shade"の意味
1.(光・日光が物体にさえぎられてできる、暗い)陰、日陰
2.日よけ、ブラインド;(ランプの)かさ、シェード
(参照:ejje.weblio.jp/content/shade)
"shadow"の意味
1.(光がさえぎられてできる輪郭のはっきりした)影、人影、影法師
2.(水・鏡などに映る)影、映像、姿
(参照:ejje.weblio.jp/content/shadow)
どちらも光がさえぎられてできる「かげ」という意味ですが、そのニュアンスは異なるようです。
そう言えば、日本語でも引用の通り「陰」と「影」という2つの漢字表記があります。
日本語では前者「陰」は物にさえぎられて光が当たらない暗い部分を意味するのに対し、後者の「影」はできる像・形に注目しているという違いがあるようです。
(参照:weblio.jp/content/陰と影の意味の違い・使い方の解説)
その使い分けが英語にもイコールで当てはまるということになります。
"shade / shadow"の使い分け
shade :陰、日陰(光が当たらない暗がり、場所に焦点がある)
shadow:影、人影(光をさえぎってできる像、その形に焦点がある)
ところが他のヨーロッパの言語では、英語や日本語のような使い分けは無さそうです。
フランス語 ombre [オンブル]
イタリア語 ombra [オンブラ]
スペイン語 sombra [ソンブラ] ※ポルトガル語も同じ。
ドイツ語 Schatten [シャッテン]
オランダ語 schaduw [スハーディウ]
これら5つの言語では辞書で調べる限り、"shade"「陰」/ "shadow"「影」の両方を1語で表していました。
"shade / shadow"それぞれの語源は?
英語においてみられる「陰」と「影」の区別はどのように起こったのでしょうか。
語源を調べてみました。
"shade"の語源
Middle English schade,(中略)from late Old English scead "partial darkness; shelter, protection," also partly from sceadu "shade, shadow, darkness; shady place, arbor, protection from glare or heat," both from Proto-Germanic *skadwaz
対訳:中英語schade、後期古英語scead「部分的な暗闇、庇護、保護」から、およびsceadu「陰、影、暗闇、日陰の場所、小屋、光または熱からの保護」の一部分から、どちらもゲルマン祖語 *skadwazに由来
(出典:Online
etymology dictionary)
時系列を整理すると、現代英語"shade"←中英語"schade"←古英語"scead"(後期)、"sceadu"←ゲルマン祖語*skadwazというのが、この単語が辿った歴史ということになります。
そして、古英語の初めの形"sceadu"では「陰」と「影」の両方を意味する単語であったことも伺えます。
今度は"shadow"の成り立ちを確認してみましょう。
"shadow"の語源
Old English sceadwe, sceaduwe "the effect of interception of sunlight, dark image cast by someone or something when interposed between an object and a source of light," oblique cases ("to the," "from the," "of the," "in the") of sceadu
対訳:古英語sceadwe、sceaduwe「日光を遮蔽する効果、対象と光源の間に入った人や物により作られる暗い像」、sceaduの斜格形「~に」「~から」「~の」「~の中に」
(出典:Online
etymology dictionary)
古英語の時代には現代英語と同じ「影」の用法が認められるようですが、気になるのは"sceadu"の斜格形という部分です。
斜格とは、格変化する語の主格(主語になる形)以外の格をまとめて呼ぶ総称です。
英語を例にとれば、人称代名詞の I「私は」が主格と言えるのに対し、me「私を、私に」が斜格と言うことができます。
現代英語では人称代名詞以外で格変化を失いましたが、昔の英語には一般名詞にも格変化が存在していました。
英語版Wiktionaryによれば、古英語"sceadu"(単数、主格形)の斜格形は"sceadwe"であることが分かります。
つまり、現代では"shade"と"shadow"という異なる2つの単語は、ルーツを遡れば実は同じ単語で格が異なるだけだったということになります。
格変化に関しては既に古英語(10世紀頃まで)から中英語(15世紀頃まで)に至るまでに変化形がかなり単純化していたという説もあるようです。
そんな中で主格と斜格形が後に別の単語として生き残るというのは、英語におけるとても面白い例だと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"shade"と"shadow"の違いについて調べてみました。
その用法は日本語の漢字表記「陰」と「影」のような違いがあるということでしたが、実はルーツは同じ単語だったということが分かりました。
言葉はいろいろな影響で様々な発展を遂げるものだとは思いますが、このような発展の方法もあるというのですから本当に奥が深いですね。
英語における似た単語の比較としては、過去に"garden"と"yard"の比較を行ったこともあります。
また"shirt"と"skirt"も語源をさかのぼるとルーツの関連性が伺えます。