ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
言葉は長い時間を経て発展してきた歴史を持つ故、廃りや新語の発生、語形や意味の変化など様々な移り変わりがあります。
日本語では「貴様」という代名詞が元は敬称であったのが、時代を経て現代では同等か目下の相手の呼称、更にはののしる場合にも使われるようになった例があります。
英語でもそうした意味の変化はあり、今回取り挙げる"nice"という単語もその一例です。
現代英語"nice"の意味とは?
カタカナ語で「ナイス」としても日常よく用いられる"nice"ですが、改めてその意味を調べてみましょう。
1.a かわいい、魅力のある
b おいしい
c 見事な、あざやかな
2.気持ちのいい、快い、快適な、楽しい
3.親切な、優しい
(参照:ejje.weblio.jp/content/nice)
ここまではイメージがしやすい用法だと思います。ところが、"nice"には他にも用法があるようです。
4.限定用法の形容詞
a 微妙な、難しい;識別力[精密さ]を要する
b〈機具など〉精密な
5.《反語》困った、いやな
6.上品な、高尚な
7.a 叙述用法の形容詞(~に)難しく、好みがやかましく
b 謹厳な、きちょうめんな
(参照:ejje.weblio.jp/content/nice)
4つ目より先はどちらかというとネガティブな意味になってきました。
基本的な単語こそよく使われることから、多様な意味に発展しているものと思います。
語源に見る"nice"の意味の変遷とは
一般的なポジティブな用法からネガティブな用法まで、幅広い意味を持つ"nice"はどのように発展してきたのでしょうか。
ルーツを辿って調べてみましょう。
late 13c., "foolish, ignorant, frivolous, senseless," from Old French nice (12c.) "careless, clumsy; weak; poor, needy; simple, stupid, silly, foolish,"
対訳:13世紀後半、「馬鹿な、無知な、軽薄な、無意味な」、古フランス語nice(12世紀)「不注意な、不器用な、弱い、乏しい、まずしい、単純な、愚かな、ばかげた、馬鹿な」から
(出典:Online etymology
dictionary)
何と、元々は非常にネガティブな意味を持つ単語であったようです。
引用するにも気の滅入るような意味のオンパレードです。
英語の直接のルーツは古フランス語とのことですが、やはりネガティブな意味であることが分かります。
更にルーツを遡ってみましょう。
from Latin nescius "ignorant, unaware," literally "not-knowing," from ne- "not" (from PIE root *ne- "not") + stem of scire "to know"
対訳:ラテン語nescius「無知な、不注意な」に由来、文字通りには「知らない」、ne-「~ない(印欧祖語の語根*ne-「~ない」より)」とscire「知る」の語幹から
(出典:Online
etymology dictionary)
古フランス語はラテン語からの派生ですが、ラテン語における元の形は「知らない」という意味にあることが分かりました。
では、現代のポジティブな意味はどのように誕生したのでしょうか。
from "timid, faint-hearted" (pre-1300); to "fussy, fastidious" (late 14c.); to "dainty, delicate" (c. 1400); to "precise, careful" (1500s, preserved in such terms as a nice distinction and nice and early); to "agreeable, delightful" (1769); to "kind, thoughtful" (1830).
対訳:「臆病な、弱気な」(1300年以前)から「うるさい、気難しい」(14世紀後半)、「可憐な、繊細な」(1400年頃)、「正確な、注意深い」(1500年頃、現代でもnice distinctionやnice and earlyなどの表現で残る)、「快適な、楽しい」(1769年)、「親切な、思慮深い」(1830年)に至る。
(出典:Online
etymology dictionary)
原義の「馬鹿な、無知な」から始まり少なくとも6段階の変化を経ていることが分かります。ネガティブな意味が薄れてきたのは1400年頃の「可憐な、繊細な」という点からでしょうか。
これだけの意味の変化は、英国の言語学者にも特筆されているようです。
"The sense development has been extraordinary, even for an adj." [Weekley]
対訳:この意味の発展は、形容詞ということを考慮しても常軌を逸していました。
(出典:Online
etymology dictionary)
Weekley氏の言によれば形容詞は意味が発展しやすいということで、他にも似たような例があるのかもしれませんね。
今後もこうした発見があれば取り上げていきたいと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"nice"の意味について調べてみました。
最近はSNSの応答で「ナイス!」など使われる機会もありますが、本来はネガティブな意味を持っていたというのは面白いですね。
現代、我々が使っている単語も遠い将来は違った使われ方があるかもしれず、言葉というのは本当に面白いものだと思います。