ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
ヨーロッパの国々は今も昔も人気の高い海外旅行先の一つです。日本とは異なる文化や歴史遺産に触れることができる見どころが多くあります。
とりわけ2つの「小さな○○」は観光のハイライトになるのではないでしょうか?
では「小さな○○」とは何か?以下から紹介していきたいと思います。
その1「小さな砦」とは?
2つの内1つ目の「小さな○○」は「小さな砦」です。
「小さな砦」と言われてもピンときませんか?
例えばイギリスの王室が所有するウィンザー城やフランスのロワール渓谷沿いに建つシャンボール城が、「小さな砦」であると言えます。
しかしどちらも巨大な建築物で小さくなければ、荘厳な外観は砦らしくもありません。
どういうことかと言うと、実は「お城」に相当する英語"castle"やフランス語"château" [シャト]の語源が「小さな砦」ということなのです。
from Latin castellum "a castle, fort, citadel, stronghold; fortified village," diminutive of castrum "fort," (中略). In early bibles, castle was used to translate Greek kome "village."
対訳:ラテン語castellum「お城、砦、要塞、城市」に由来しcastrum「砦」の指小形(中略)。初期の聖書ではcastleはギリシャ語kome「村」の訳語に用いられた。
(出典:Online
etymology dictionary)
英語"castle"やフランス語"château"のルーツはラテン語"castellum"ということですが、語尾"-ellum"の部分が対象に小さいイメージを与える指小辞なのです。
"castellum"の場合は、元の単語"catrum"「砦」が語尾"-ellum"によって「小さな砦」というイメージに変化したということになります。
それが時代を経ると、指小形の方が現代英語やフランス語の「お城」として残ったということですね。
地名に残るラテン語"castrum"
その一方で"castrum"については、現代英語では地名に用いられています。
Latin castrum in its plural castra was used for "military encampment, military post" and thus it came into Old English as ceaster and formed the -caster and -chester in place names.
対訳:ラテン語castrumの複数形castraは「軍の陣地、駐屯地」として用いられ古英語ceasterとして取り入れられた結果、地名-casterや-chesterを形成した。
(出典:Online
etymology dictionary)
"-caster"や"-chester"を持つ地名と言えば、例えば"Lancaster" [ランカスター]や"Manchester" [マンチェスター]等があります。
それぞれの由来ですが、"Lancaster"は"River
Lune"「ルーン川」の側に築いたローマ人の砦"castrum"からだそうです(参照:en.wiktionary)。
"Manchester"は、胸の形をした山の存在からブルトン語"mamm"「母親、雌、子宮」と"-chester(castrum)"が由来だそうです(参照:en.wiktionary)。
その2「小さなケープ」とは?
もう1つのハイライトは「小さなケープ」ではないでしょうか。
「ケープ」はアウターの一種で、袖のない肩掛けのマントのようなものです。
では「小さなケープ」とは何のことでしょうか?
実はこれ、キリスト教関連の建築物である「礼拝堂」(英"chapel")の語源と言われています。
from Medieval Latin capella, cappella "chapel, sanctuary for relics," literally "little cape," diminutive of Late Latin cappa "cape"
対訳:中世ラテン語capellaまたはcappella「礼拝堂、遺物の聖域」から、原義は「小さなケープ」であり後期ラテン語cappa「ケープ」の指小形。
(出典:Online
etymology dictionary)
語尾"-ella"が「小さい」と言うイメージを付与する指小辞です。
「お城」の語源となったラテン語"castellum"の語尾"-ellum"とは微妙に形が異なることに気づいた方もいるかもしれませんが、これは名詞の性が異なるためです。
ラテン語"castellum"は中性名詞である一方"cap(p)ella"は女性名詞であるため、語尾が異なるのですが、"-ellum"も"-ella"も指小辞であることに変わりありません。
"cap(p)ella"の場合は、元の単語"cappa"「ケープ」に語尾"-ella"がついて「小さなケープ」に変化したということですね。
なぜ「小さなケープ」が「礼拝堂」?
とはいえ、元は衣類を指す「小さなケープ」がどうして「礼拝堂」と言う意味に転じたのでしょうか。
一説によるとフランスに残る伝説によるそうです。
By tradition, the name is originally in reference to the sanctuary in France in which the miraculous cape of St. Martin of Tours, patron saint of France, was preserved. (While serving Rome as a soldier deployed in Gaul, Martin cut his military coat in half to share it with a ragged beggar. That night, Martin dreamed Christ wearing the half-cloak; the half Martin kept was the relic.)
(出典:Online
etymology dictionary)
それによると、ローマ時代の軍人マルティヌスがガリア(現在のフランス)に配備されていたときのこと。
彼は自身が羽織っていた軍のコートを半分に切って、ぼろを着ていた乞食に分け与えたのだそうです。
するとその晩、眠るマルティヌスの夢の中にその半分になったコートを着たキリストが現れたのです。
そこでもう半分のコートは聖遺物として大切に保存され、"cap(p)ella"「小さなケープ」がその場所を聖域として指す言葉になったのでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。ヨーロッパ観光におけるハイライト「小さい砦」や「小さいケープ」とは、実はそれぞれ「お城」と「礼拝堂」の語源でした。
現地で見られる「お城」や「礼拝堂」は荘厳な外観から「小さい」と言うイメージが湧きづらいですが、観光の際にはその語源にも思いを馳せてみると面白いかもしれませんね。