ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学していますか?
言葉というのは、しばしば一単語に対し複数の意味で用いられることがあります。
その背景は、元は語源が異なるものの言葉が進化して同じ語形になった結果であったり新たに意味が派生した結果であったりと様々です。
今回は英語"port"という単語について、一般的な用法「港」以外の意味を調べてみたいと思います。
英語"port"の意味とは?
基本単語である"port"は、一般的には「港」という意味で認識されていると思います。
しかしながら「港」という意味の他にも、様々な用法があります。
プログレッシブ英和中辞典(第4版)では、以下の通り大きく5つの用法に分けられています。
1.港、港町
2.城門、(コンピュータ機器の)接続ポート
3.(海事)左舷、航空機の左側
4.(軍事)控え銃
5.ポートワイン
(参照:kotobank.jp/ejword/port)
ざっと並べてみましたが、海事や軍事関連からコンピュータ関連まで様々な用法を持っていることが分かります。
英語"port"の語源とは?
これだけ幅広い用法を持っている単語"port"ですが、その語源はどこにあるのでしょうか。
Online
etymology dictionaryによれば、究極には印欧祖語の語根*per-「導く、通過する」にルーツがあるようです。
印欧祖語から派生した言語の1つがラテン語とされていますが、語根*per-からは"portus"「港」や"porta"「入口、門」が派生したと推測されています。
「港」も「入口」も語根のイメージ「導く、通過する」から連想が可能ですね。
ラテン語では"portus"と"porta"のように語尾が異なっていますが、取り入れた英語においては同じ語形になったということになります。
以上からラテン語"portus"が1.港という意味のルーツであり、"porta"が、2.城門、接続ポートという意味のルーツになったと考えられますね。
英語"port"が船や航空機の左側を意味する理由
「港」や「入口」という意味は印欧祖語*per-の概念から類推ができました。
では上に挙げた3.「左舷、航空機の左側」という用法はどのようにして生まれたのでしょうか?
Online etymology dictionaryによると、その理由は以下のように解説されています。
probably from the notion of "the side facing the harbor" (when a ship is docked)(中略) On old-style vessels the steering oar was on the right side, thus they would tie up at a wharf on the other side.
対訳:恐らく「(船が停泊する際の)港に接する側」という概念から。(中略)昔の船は舵取りのオールが船の右側にあった為、反対側を埠頭につなぎ止めていました。
(出典:Online
etymology dictionary)
昔の手漕ぎ船の構造に起因していたということですね。ちなみに現代の船もやはり左側が港に接するように停泊されています。
ちなみに、左側が"port"であるのに対して右側(右舷)は"starboard"と言います。
"starboard"の由来は以下の通りです。
Old English steorbord, literally "steer-board, side on which a vessel was steered,"
対訳:古英語steorbord、原義は「舵取りの板、船の舵取りをする側」
(出典:Online
etymology dictionary)
右舷に関しても、昔の手漕ぎ船の構造を受け継いでいるということですね。
元は左舷を意味していた英語"larboard"とは?
ところで、左が"port"に対して右が"starboard"というのは何だか表現として非対称だと思いませんか?
実は、左側はもともと"port"とは言いませんでした。
本来"larboard"という単語が当てられていたのです。その語源は以下の通りです。
perhaps literally "the loading side,"
対訳:恐らく原義は「積載する側」。
(出典:Online
etymology dictionary)
荷物の積載や人の乗降も当然港に接する船の左側ですね。ではなぜ本来の単語"larboard"が"port"に置き換わってしまったのでしょうか。
Altered 16c. by influence of starboard, then, to avoid confusion of similar-sounding words, it was largely replaced by the specialized sense of port
対訳:16世紀にstarboard「右舷」と似た音による混乱を避けるため、portを特別な用法「左舷」として広く置き換えられました。
(出典:Online
etymology dictionary)
左が"larboard"に対して右が"starboard"だと音が似ていることからややこしい、ということが理由だったようです。
以上のことから、「左舷」は「港」の用法から発展したと言えます。
英語"port"の意味する控え銃とは?
ではもう1つ、用法の4.「(軍事)控え銃」について調べてみましょう。
そもそも控え銃とは何でしょうか?
防衛省・自衛隊のHPによると、読みは『ひかえつつ』で気を付け姿勢のまま小銃を両手で持ち体の前で支える状態とあります。
この用法の"port"は、ラテン語"portare"という動詞に由来します。
"portare"は「運ぶ、携行する」という意味で、これまで見てきたラテン語"portus"や"porta"と同じように印欧祖語の語根*perから来ています。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"port"の持つ様々な用法について考えてみました。
意味が複数ある場合でも調べてみると、ルーツは1つだったり別の意味から派生した結果だったりということが分かるため、関連付けて覚えることができそうです。
意味によっては日常使われないものもありますが、今後も語彙を増やす際の参考に語源を調べていきたいと思います。