ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
言葉というのは使われる時代や地域、環境などによって様々なバリエーションがあります。
興味深いのは、日本語では一つの単語で表現するところを外国語では複数の単語に分けて区別する例が多々あることです。
今回は、日本語の「駅」に相当する単語を複数持つ外国語の例を取り上げます。
フランス語の「駅」
フランス語には日本語の「駅」に相当する例が少なくとも2つあります。
1つ目は"gare" [ガール]、2つ目は"station" [スタスィオン]です。
1. "gare"の表す「駅」
「プログレッシブ仏和辞典(第2版)」の解説によれば、"gare"の意味は以下の通りです。
1(鉄道の)駅。
2 gare routière バスターミナル;トラックターミナル
(参照:kotobank.jp/frjaword/gare)
フランスの首都パリには、北駅や東駅という駅があります。
それぞれ近隣国からの国際列車やフランス国内の長距離列車などが発着する主要駅です。
北駅はフランス語で"Gare du
Nord"「北の駅」、東駅は"Gare de l’Est"「東の駅」と表現され、「駅」に相当する単語に"Gare"が用いられています。
2. "station"の表す「駅」
ではもう1つの「駅」、"station"についてです。
「プログレッシブ仏和辞典(第2版)」の解説によれば、その意味は以下の通りです。
1 駅。
2 立ち寄ること、立ち止まること。
3 姿勢
4 保養地、リゾート。
5 観測所、研究所;放送局、発信基地。
6(給油などの)施設。
(参照:kotobank.jp/frjaword/station)
"station"は「駅」の他にも、「立ち寄ること」や「姿勢」など多岐の意味があることが分かります。
では、"gare"の「駅」と"station"の「駅」はどう区別されているのでしょうか?
フランス語「駅」"gare"と"station"の違いとは?
仏和辞典の解説を見るに、違いを区別するカギは"gare"における「(鉄道の)」という但し書きにありそうです。
鉄道の駅は"gare"で、それ以外(バスやトラム)は"station"を用いるということでしょうか?
調べてみると、大まかに以下の使い分けが分かりました。
gare…鉄道(SNCF※フランス国鉄)の駅、大規模な(長距離路線)バスのターミナル
station…地下鉄の駅、バスやトラムの停留所(=arrêt)
地下鉄も「鉄道」では?と思うのですが、フランスでは地下鉄駅には"gare"を用いず専ら"station de
métro"と表現するようです。
バスやトラムも"station"ですが、一方で大規模なバスターミナルや都市間を結ぶ長距離路線バスの駅は"gare"が用いられるなど、駅の規模による使い分けなのかもしれませんね。
ちなみに、他にも"arrêt" [アレ]という単語もあります。こちらは日本語で「停車場」や「電停」の方が近いように感じますが、フランス語において"station"と"arrêt"は同義語としてどちらでも使えるようです。
例"station de métro" = "arrêt
de métro"「地下鉄の駅」
以上の情報はこちらのサイトを参照しました。
ロシア語の「駅」
続いて、ロシア語でも「駅」に相当する単語が2つあります。
1つ目は"vokzal" [ヴァグザール]、2つ目は"stancija" [スタンツィヤ]です※。
※ロシア語は通常キリル文字で表記されますが、当ブログではラテン文字転記しています。
まずはそれぞれの単語の意味を確認してみましょう。
1. "vokzal"の表す「駅」
「プログレッシブ ロシア語辞典(露和編)」の解説によれば、"vokzal"の意味は以下の通りです。
(鉄道、バス、飛行機の)ターミナル、中央駅
(参照:kotobank.jp/rujaword/вокзал)
2. "stancija"の表す「駅」
ではもう1つ、"stancija"の意味は何でしょうか。
「プログレッシブ ロシア語辞典(露和編)」の解説によれば、その意味は以下の通りです。
1 駅。
2(サービス・研究のための)施設、局、所、ステーション。
3 宇宙ステーション。
(参照:kotobank.jp/rujaword/станция)
ロシア語「駅」"vokzal"と"stancija"の違いとは?
辞書の意味から両者を比べてみると、"vokzal"は「駅」という意味のみであるのに対し、"stancija"は「駅」の他にも用途があることが分かります。
また"vokzal"はとりわけ「ターミナル」に用いられる語であると言えます。
ロシアの首都モスクワには9つのターミナル駅があり、それらが"vokzal"です。
興味深いのは、ターミナル駅の名前が行き先の地名を冠していることです。
例えばキエフスキー駅("Kijevskij
Vokzal")はキエフ方面の列車が発着するターミナル駅であることからキエフの名を冠していますが、モスクワ市内にある駅です。
つまり逆に言えばモスクワ市内に「モスクワ駅」という名前は存在しないということになります。
固有名詞に由来する"Vokzal"?
とりわけ「ターミナル駅」を意味する"Vokzal"は、その語源も興味深いものがあります。
というのも、この語源は固有名詞から取られているというのです。
Borrowed from English Vauxhall (former site of a pleasure garden).(中略)The transportation sense derives from an epithet for the Pavlovsk train station building, which at one time served as both a passenger lounge and a place of entertainment.
対訳:英語Vauxhall(かつての遊園地があった場所)からの借用語。(中略)輸送関係の用法は乗客用ラウンジと娯楽の場の両方を提供したパヴロフスク駅の別名に由来する。
(出典:en.wiktionary)
"Vauxhall"は[ヴォクソール]のように英語では発音されますが、ロシア語では転じて"Vokzal" [ヴァグザール]になったというのです。
ヴォクソールはロンドン市内にある地区名です。17~19世紀に掛けて当地にはプレジャー・ガーデン(現代の遊園地のようなもの)がありました。
つまり本来の"Vauxhall"は「駅」とは無関係であったものの、パヴロフスク駅が娯楽の場も持っていた点で"Vauxhall"のプレジャー・ガーデンのような場所だとされたのでしょう。
とはいえ、その別名に固有名詞が当てられ更には一般名詞として「ターミナル駅」を意味する単語となったというのは何とも面白いですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、フランス語とロシア語から「駅」を表す複数の単語について調べてみました。
日本語ではどちらも「駅」という表現が他の言語になると、その用途などによって複数の単語で使い分けられているというのは面白いですね。
「駅」は特に旅行先で利用する機会の多い施設ですが、現地を訪れた際にはその表記にも注目してみたいと思います。