ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
先日の記事で英語とドイツ語の間で似ている単語と似ていない単語についてまとめました。
詳しくはこちら。
その際改めて気づいたのですが、「帽子」を意味する英語"hat"とドイツ語"Hut"はなぜ微妙につづりが異なるのでしょうか?
今回はその疑問について調べてみたいと思います。
英語"hat"とドイツ語"Hut"について
まずこの両単語はどちらも「(縁のある)帽子」という意味を持ちます。
注意すべきは「(縁のある)」という但し書きです。
日本語では区別されませんが、英語とドイツ語では縁のある/なしで「帽子」を表す単語が異なります。
縁あり 英語"hat" / ドイツ語"Hut"
縁なし 英語"Cap" / ドイツ語"Kappe"または"Mütze"
今回は縁のある「帽子」に注目しますが、英語"hat"とドイツ語"Hut"を見て分かるように用いられている母音が微妙に異なります。
英語とドイツ語は同じゲルマン系の言語グループに属すことから語源も同じと思われますが、今回のようにちょっとしたつづりの違いはどうして生まれたのでしょうか?
もしくはルーツそのものが異なるためなのでしょうか?
それぞれの語源を紐解きながら答えを探ってみたいと思います。
英語"hat"の語源とは?
まずは英語で「帽子」を意味するhatから。
英語版Wiktionaryによるとその成り立ちは以下の通りです。
From Middle English hat, from Old English hæt (“head-covering, hat”), from Proto-Germanic *hattuz (“hat”), from Proto-Indo-European *kadʰ- (“to guard, cover, care for, protect”).
(参照:en.wiktionary)
引用文から"hat"のルーツは以下の流れであることが分かります。
現代hat→中英語hat→古英語hæt→ゲルマン祖語*hattuz→インド・ヨーロッパ祖語*kadʰ
ルーツはあくまで現代の言葉から再構築された形ですが、とはいえ古英語の頃からほぼ形は変わらず現代の"hat"に至っていることが伺えます。
では、微妙につづりの異なるドイツ語"Hut"の語源を今度は見てみましょう。
ドイツ語"Hut"の語源とは?
やはり英語版Wiktionaryにて調べてみると、その成り立ちは以下であるとされています。
from Old High German huot, from Proto-Germanic *hōdaz, from Proto-Indo-European *kadʰ- (“to protect”).
(参照:en.wiktionary)
引用文からルーツの流れを以下のようにまとめます。
現代Hut→古高ドイツ語huot→ゲルマン祖語*hōdaz→インド・ヨーロッパ祖語*kadʰ-
何と、英語"hat"のルーツと同じインド・ヨーロッパ祖語"*kadʰ-"に行き着きました。
つまり英語"hat"とドイツ語"Hut"は同じ語源から生まれた単語だということになります。
微妙につづりが異なる理由は、途中で枝分かれした単語によるものだったんですね。
地域によって異なる発展をしたゲルマン祖語
以上のようにインド・ヨーロッパ祖語から、以下のように二つのゲルマン祖語が派生していることが分かりました。
英語 hat …ゲルマン祖語*hattuz
ドイツ語Hut …ゲルマン祖語*hōdaz
このゲルマン祖語について更に調べてみると、地域によって分かれていることが伺えます。
英語版Wiktionaryによれば、
1.*hattuz(英語"hat")の方は、グレートブリテン島から北欧の諸言語に分布。
例:英語hatの他、アイスランド語hattur、スウェーデン語hatt、デンマーク語hat等
2.*hōdaz(独語"Hut")の方は、グレートブリテン島やオランダ、ドイツの諸言語に分布。
例:ドイツ語Hutの他、英語hood、オランダ語hoed、ルクセンブルク語hutt等
ゲルマン民族は様々な部族が広がっていった結果、地域によって途中から異なる形で言語が発展したのかもしれませんね。
ただ興味深いのは、英語においては1と2の両方をルーツに持つ単語が両立しているということです。
英語"hat"とドイツ語"Hut"は同じルーツだったとはいえ、上のまとめから見ればより近い関係としては英語"hood"とドイツ語"Hut"にあったということが分かりました。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は同じ「(縁ありの)帽子」を意味しながらつづりが微妙に異なる英語"hat"とドイツ語"Hut"の関係について調べてみました。
結果は、実は同じインド・ヨーロッパ祖語にルーツを持つということが分かりました。
ただ歴史をたどると地域によって途中で分岐した結果、微妙につづりが異なって今に至っているということですね。
同じゲルマン系の言語とはいえ、地域によって異なる単語が派生していくというのは面白い事例ですね。
今後も興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。