ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
フランス語には発音上、母音の連続を避けるために起こる音変化としてアンシェヌマンやリエゾンというものがあります。
フランス語をネイティブのように、また正確に話し、聞くために大切な要素であるこうした音変化について今回は調べてみました。
アンシェヌマン、リエゾンとは?
先述の通り、フランス語は母音の連続を避けるために音を変化させる例があります。
そして変化させる方法というのがアンシェヌマンやリエゾンと呼ばれるものです。
具体的にはどのような音変化を指すのでしょうか?
1.アンシェヌマン
例えば"amie" [アミ]「女性の友達」に不定冠詞"une"[ユヌ]が付いた形、"une amie"は[ユヌ・アミ]ではなく、"n"と"a"の音を続けて[ユナミ]のように発音します。
アンシェヌマンとはフランス語で"enchaînement"ですが、これは「連鎖、つながり」を意味する一般名詞です。
語中にも"chaîne"「鎖、チェーン(英"chain")」という語が含まれている通り、まさに前後の単語の音が連鎖するイメージがアンシェヌマンだと言えます。
2.リエゾン
先程と同じ例"amie" [アミ]を複数形"amies"[アミ(発音は不変)]にし、今度はそこに定冠詞"les"[レ]を付けてみましょう、
この時"les amies"は[レ・アミ]ではなく、"les"の子音"s"を読んで[レザミ]のように発音します。
※フランス語"s"は本来「サ行」の音ですが、母音に挟まれた時は「ザ行」の音になります。
リエゾンもやはりフランス語で"liaison"「連絡、関係」という一般名詞でもあります。
以上の例から分かる通り、フランス語は"amie"という母音で始まる単語を覚える際に冠詞などの影響を考慮しておかないと、正しく発音できないor聞き取れない…という可能性があります。
アンシェヌマン、リエゾンの違いとは?
先程の例でどちらも"amie /
amies"という単語を取り上げました。
一見、前後の音がつながるという点で同じように感じますが、アンシェヌマンとリエゾンの違いとは何でしょうか。
アンシェヌマンの例"une"[ユヌ]はもともと"n"が発音されます。
一方でリエゾンの例"les"[レ]はもともと"s"が発音されません。
リエゾンの場合は、母音で始まる単語が続くときにはじめて"s"が発音されることになります。これがアンシェヌマンとリエゾンの違いになります。
フランス語"h" [アッシュ]の取扱いについて
上述の通り、フランス語では語頭が母音で始まる単語の前に冠詞など付ける場合は音のつながりに気を付けなければなりません。
合わせて注意を要するのが子音"h"[アッシュ]で始まる単語です。
フランス語に限らずラテン語をルーツに持つロマンス諸語において、子音"h"は発音がされません。
それどころか"h"自体が脱落してしまう例もあります。
この子音"h"は発音がされないため、語頭であっても"h"は存在しないものとして直前の語と音がつながることになります。
例えば"habits"[アビ]「(複数形で)衣服」に定冠詞"les"を付けた"les habits"は[レ・アビ]ではなく、[レザビ]と音をつなげて発音します。
フランス語"héros"「英雄」はリエゾンする?しない?
この子音"h"の取扱いについて興味深い例があります。
古代ギリシャ語起源でラテン語"heros"から借用した"héros"の例です。
意味は「英雄(英"hero")」であり、[エロ]のように発音されます。
先述の例で言えば、語頭の音が母音で始まるためにリエゾンするように思われます。
ところが"héros"に関しては「リエゾンしない」が正解です。
"héros"は単数と複数で語形が同じですが、今回は複数形として考えると定冠詞"les"を付けた場合"les héros"となります。
この発音は[レゼロ]では無く、[レ・エロ]となるのです。
何故でしょうか?
これは語頭の"h"が「有音の h 」に分類される為です。
有音の h とは?
「有音の h 」とは、発音されないものの子音としての存在が意識される"h"のことです。
この時"h"の存在により前後の音のつながりが遮断されることになります。
例えば"haricots"「(複数形)いんげん豆」は有音の h に分類される単語のため、定冠詞のついた"les
haricots"は[レ・アリコ]と発音します。
「有音の h 」はラテン語由来ではない単語(ゲルマン語由来や外来語など)においてみられる例です。
これに対し、上でみた"les habits"[レザビ]のように"h"の存在自体が無視される場合は「無音の h 」と呼ばれます。
なぜ"héros"はリエゾンしないのか?
ということで、"héros"が直前の語とリエゾンしない理由は語頭が「有音の h 」だからというのが答えでした。
ところで"héros"のルーツは既にみた通り古代ギリシャ起源とは言えラテン語からの借用語です。
またその女性形である"héroïne"[エロイヌ]「ヒロイン、女性主人公」の語頭は「無音の h 」です。
では、なぜ"héros"は「有音の h 」とされ、リエゾンしないのでしょうか?
英語版Wiktionaryによると以下のように解説されています。
The aspiration is secondary and originated in the desire to avoid that les héros sound like les zéros.
対訳:帯気音は、les hérosの発音がles zérosのように響くことを避けるため、二次的に生じたものである。
(参照:en.wiktionary)
つまり"héros"も本来は「無音の h 」の分類であったわけです。
ところが複数形のとき定冠詞の伴う"les héros"はリエゾンの結果 [レゼロ]となり、まるで"les
zéros" [レ・ゼロ]「ゼロ、零点」のように聞こえてしまうので、「ヒーロー」がそれではあんまりだという訳なのです。
フランス語において子音"h"が発音されないというのはよく知られていますが、前後の音のつながりにも意識を向けないといけないですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回はフランス語の音に着目してみました。
アンシェヌマンやリエゾンというのはフランス語の特徴的な響きをもたらす要素の1つだと思いますが、それだけに注意すべきところは押さえておきたいですね。