ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
新型コロナウイルスの影響で中止や延期を余儀なくされていたスポーツイベントも国内外問わず開催されるようになってきました。
記憶に新しいところでは昨年11月にはサッカーワールドカップがカタールにて行われました。
スタジアムで大勢の観客の下、白熱した試合が展開されるというのはやはり見ごたえがありますね。
ということで今回は「スタジアム」(英"stadium")について考えてみたいと思います。
英語"stadium"の意味、語源とは?
英和辞書で"stadium"の意味を紐解いてみると、一般的な「競技場」という意味以外にも用法があることが分かります。
1競技場、野球場、スタジアム
2《古代ギリシャ》(1)徒歩競技場、(2)スタディオン:長さの単位;185.42m
(参照:プログレッシブ英和中辞典)
実は"stadium"という単語は語源を遡ると、本来は2の(2)長さの単位を意味していたのです。
Late 14c., "a foot race; an ancient measure of length," from Latin stadium "a measure of length; a course for foot-racers" (中略), from Greek stadion "a measure of length; a race-course, a running track," especially the track at Olympia, which was one stadion in length.
対訳:14世紀後半「徒競走、古代の長さの単位」、ラテン語stadium「長さの単位、徒競走用のコース」から(中略)、ギリシャ語stadion「長さの単位、レースコース、ランニングトラック」に由来し、特に競技場の長さが1スタディオンであったオリンピアのものを指す。
(出典:Online
etymology dictionary)
オリンピアは古代ギリシャの時代、4年に1度行われた競技大会の開催地であり近代オリンピックの名前の由来にもなりました。
当時は一直線のコースだったそうですがその長さが「スタジアム」の由来になったのですね。
英語では1830年代に「競技場」という意味での用法が見られるようです。
The meaning "running track," recorded in English from c. 1600, was extended to mean in modern-day context "large, open oval structure with tiers of seats for viewing sporting events" (1834).
対訳:「ランニングトラック」の意味は英語では1600年頃から記録され、今日の文脈では「スポーツイベントの観戦用に座席が何段にも積みあがった、大きく開放的な楕円形の構造物」という意味に拡大された(1834年)。
(出典:Online
etymology dictionary)
ドイツ語で「競技場」は"Stadium"では無い?
さて、"stadium"を外来語として取り入れたのは英語だけに限りません。
欧州の他の言語でもギリシャ語から、あるいはラテン語を通じて"stadium"という単語を取り入れています。
ドイツ語も同様で、やはり"Stadium" [シュターディウム]という語があります。
ただしその意味は注意しなければなりません。
英語と違ってドイツ語では「競技場」という意味を持っていないのです。
辞書によると"Stadium"の意味は以下の通りです。
[中](-s / ..dien)(発展などの)段階、時期
(参照:プログレッシブ独和辞典)
余談ですが引用文中の冒頭にあるカッコ内の記述は、ドイツ語の名詞の性や変化形を端的に示すものです。
まず、[中]が中性名詞であることを意味しています。
次に(-s / ..dien)は、最初の"-s"が単数2格のとき"Stadiums"のように語尾"-s"をつけることを意味し、後半"..dien"は複数形で"Stadien"という形になることを意味しています。
話を戻して"Stadium"のドイツ語での意味を確認してみましょう。
意味は「競技場」では無く、「段階、時期」とあります。
もともとは借用元のラテン語と同じく「長さの単位」を意味していたそうですが、現代では「段階、時期」という意味で用いられるのです。
英語"stadium"のイメージに引っ張られないよう注意しなければなりません。
ドイツ語で「競技場」は何と言う?
では、ドイツ語では「競技場」を何と表現するのでしょうか?
正解は"Stadion" [シュターディオン]です。
辞書によるとその意味は以下の通りです。
[中](-s / ..dien)競技場、スタジアム
(参照:プログレッシブ独和辞典)
先程の"Stadium"と同じく中性名詞であることが分かります。
また単数2格で語尾"-s"を付ける点も同じです。更に複数形は"Stadien"となり、"Stadium"の複数形と同形になります。
これだけ共通点があるのは、語源がギリシャ語に由来する(つまりは"Stadium"と同じ)からです。
DWDSの語源辞典によれば、当初ドイツ語には"Stadium"というラテン語の形が取り入れられていたものの、18世紀頃からギリシャ語の形"Stadion"も取り入れられ、現代では「競技場」と言えば"Stadion"が担うようになったそうです。
(参照:www.dwds.de/wb/etymwb)
最後に
いかがでしたでしょうか。今回はギリシャ語にルーツを持つ"Stadium"、"Stadion"について調べてみました。
結果"Stadium"がもともとは「長さの単位」であったこと、ドイツ語では同じルーツから"Stadium"と"Stadion"という意味の異なる2語が併存しているという興味深い発見が得られました。
特にドイツ語では、英語"Stadium"の意味に引っ張られないよう要注意ですね。
今後も興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。