ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
日常生活において略語の使用は当たり前になっており、中には略語の元の語が分からない等の例もあるかもしれません。
コンビニのことを「コンビニエンスストア(英"convenience store")」と日常的に言う人はいないでしょう。
また、エンストは「エンジンストップ」の略だとばかり思っていたのですが、正しくは「エンジンストール(英"engine stall")」の略なのだそうです。
外来語やカタカナ英語が略される例が多いのかもしれませんが、日用品の略語に「ハンカチ」があります。
元の語は「ハンカチーフ(英"handkerchief")」と言います。
"hand"が「手」であることはハンカチの用途からも明らかですが、"kerchief"とは一体何でしょうか。
他にネッカチーフ(英"neckerchief")という語にも見られますが、"kerchief"単体ではまずお目に掛かったことがありません。
そこで今回は、ハンカチの「カチ」に当たる"kerchief"という語について調べてみたいと思います。
英語"kerchief"とは?
英語版Wiktionaryによると、"kerchief"という単語が単独の項目で見つかりました。
(dated) A piece of cloth used to cover the head; a bandana.
対訳:(古)頭部を覆うための布切れ、バンダナ。
(参照:en.wiktionary)
ただし引用中にある通り、現代では用いられない古い表現のようです。
また、その意味は「頭部を覆うための布」だということですが、これは"kerchief"の語源を遡るとイメージがはっきりします。
early 13c., kovrechief "piece of cloth used to cover part of the head," especially a woman's head-cloth or veil, from Anglo-French courchief, Old French couvrechief "a kerchief," literally "cover head," from couvrir "to cover" + chief "head" (from Latin caput "head," from PIE root *kaput- "head").
対訳:13世紀初め、kovrechief「頭部を覆うための布切れ」、特に女性用の頭巾やベールのこと、アングロ・フランス語courchief ← 古フランス語couvrechief「頭巾」から、原義は”cover head”、couvrir「覆う」+ chief「頭」(ラテン語caput「頭」← 印欧祖語の語根*kaput-「頭」に由来)から。
(出典:Online
etymology dictionary)
"kerchief"とは、"ker" + "chief"という2つのパーツから成り、それぞれ"cover"と"head"という原義があったのですね。
まさに「頭部を覆う」という用途によるネーミングだと言えます。
「頭を覆う布」から「手持ちの布」へ
原義と用途がどちらも「頭を覆う」ことであった"kerchief"ですが、時代を経てその意味が変化していきます。
From late 14c. as "piece of cloth used about the person" generally, for purposes other than covering the head; and from c. 1400 as "piece of cloth carried in the hand" to wipe the face, etc.
対訳:14世紀後半から頭を覆う以外の用途で「人が身につける布」という意味が一般的となり、1400年頃からは顔を拭くため等の用途で「手持ちの布」という意味になりました。
(出典:Online
etymology dictionary)
単独の"kerchief"がハンカチを指す語に近づいていったようです。
そこから更に時代を経て、"hand"がくっついた"handkerchief"という語が誕生します。
1520s, from hand + kerchief, originally "cloth for covering the head," but since Middle English used generally as "piece of cloth used about the person." A curious confluence of words for "hand" and "head."
対訳:1520年代、hand+kerchiefから、元は「頭を覆うための布」であったが中英語の時代以降、「人が身につける布」という意味が一般的となった。「手」と「頭」を意味する語が結合した珍しい例。
(出典:Online
etymology dictionary)
引用中にある通り、原義で「頭」という意味が含まれる後に「手」を意味する"hand"がくっついてできた珍しいルーツが"handkerchief"には隠れていました。
どのような当時の背景があったのかは分かりかねますが推測するに、kerchiefの意味が「頭を覆う布」から頭に限らず「身につける布」という意味に変化した結果、「手」の部分を強調するために"hand"がついたのではないでしょうか。
同じように「首もと」に身につけることを強調する語として"neckerchief"「ネッカチーフ」が生まれたのでしょう。
ということで"handkerchief"の"kerchief"とは、もともと「頭を覆う」という意味と用途が隠されていることが明らかになりました。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回はハンカチという語について考えてみました。
その本来の語形"handkerchief"からは、時代によって用途の移り変わった布の歴史を垣間見れることができました。
今後も語源を尋ねることで興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。