ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
多くの方にとって、お昼休みや昼食の開始は午後0時ではないでしょうか。
ちょうど午後0時は日本語では「正午」、英語では"noon"と呼ばれ午前と午後の分かれ目でもあります。
今回はそんな午前と午後の分かれ目、"noon"「正午」という単語について調べてみたいと思います。
「午前」をa.m.「午後」をp.m.と呼ぶ理由とは?
"noon"「正午」について調べる前に、英語で「午前」「午後」の表記として日常目にする以下の表現についても調べてみました。
a.m. ・・・「午前」
p.m. ・・・「午後」
ピリオドで区切られていることから、何かの略だと推測はできると思いますが、実は元々ラテン語の単語を省略したものです。
a.m. ・・・ ante
meridiem
p.m. ・・・ post
meridiem
共通する"meridiem"とは、"meri-"(=medi)「真ん中」と"-diem"「日、昼」から成る語であり、要するに「正午」を意味します。
「真ん中」という表現は、他にも"medium"「ミディアム」という語があるように本来は"medi-"というつづりでした。
しかし後続の"-diem"が付くと子音"-d-"が連続するのを嫌い、"medidiem" → "meridiem"と前方の-d-は-r-へと音変化したというわけです(これを「異化」と呼びます)。
そして、a.m.の"ante-"は「前の(英"before")」、p.m.の"post-"は「後の(英"after")」を意味することから、それぞれ以下の意味となります。
a.m. ・・・ ante meridiem「正午の前 = 午前」
p.m. ・・・ post
meridiem「正午の後 = 午後」
英語のa.m. / p.m.はラテン語、つまりローマ人の時代から続く表現だったのですね。
英語"noon"はもともと「正午」では無かった!?
a.m.「午前」とp.m.「午後」について分かったところで、本題の"noon"「正午」について調べてみましょう。
今でこそ辞書で"noon"を引けば、『正午、真昼』という意味や『(太陽の最も高くなる時点である事から比喩的に)全盛期、絶頂』という意味が見つかりますが、実は"noon"は本来昼の12時を指す語ではありませんでした。
Online
etymology dictionaryによると古英語の時代の意味は以下の通りです。
Old English non "3 o'clock p.m., the ninth hour from sunrise," also "the canonical hour of nones,"
対訳:古英語non「午後3時、日の出から9時間目」または「祈祷時間の九時課」。
(出典:Online
etymology dictionary)
直接のルーツである古英語の時代には「正午」ではなく「午後3時」を指していたというのです。
また午後3時に聖職者が行う祈りが「九時課」だそうですが、「日の出から9時間目」にもある数字「9」が"noon"の語源に深く関わっています。
そう言えば「9」は英語で"nine"・・・、"noon"と音やつづりが似ていますね。
from Latin nona hora "ninth hour" of daylight, by Roman and ecclesiastical reckoning about 3 p.m., from nona, fem. singular of nonus "ninth,"
対訳:ラテン語nona hora「(昼の)9時間目」から、ローマ人聖職者の午後3時の計算法に由来、nonaはnonus「9番目」の単数女性形
(出典:Online
etymology dictionary)
更に遡ると、究極的にはラテン語の"nona"「9番目の」が"noon"のルーツであったのです。
"noon"と"nine"が似ているのは偶然ではなく、語源的にも当然のことだったのですね。
なぜ「午後3時」から「正午」の意味に変化した?
すると、気になるのは何故「午後3時」という元々の意味が「正午」に変化したか、という点です。
12世紀頃から意味の変化が見られ、理由は不確かながらいくつかの説が考えられるそうです。
1.時計の精度や日の出時間の揺れのため
今でこそ時計が時を刻む精度は高く安定していますが、その昔は精度も低く時計が示す時刻に対する信頼性も低いものでした。
その揺れが時間表現のずれをもたらしたと考えられます。
various reasons are given for it, such as unreliability of medieval time-keeping devices and the seasonal elasticity of the hours of daylight in northern regions.
対訳:その背景は中世の時計装置の精度が低かったことや北部地域では季節により日照時間の差が大きかったことなど様々な理由が考えられます。
(出典:Online
etymology dictionary)
また、ヨーロッパの高緯度地域は季節による日照時間の変化がとても大きいです。
例えばロンドンは冬季の日の出がだいたい午前8時頃である一方、夏季には午前4時前から日が出始めます。
日本以上に大きな日の出時間の差が、時刻の表現に影響を与えるというのも当然と言えるでしょう。
2.昼食の時間が繰り上がったため
他には、食事の時間が関係しているとする説もあるそうです。
In monasteries and on holy days, fasting ended at nones, which perhaps offered another incentive to nudge it up the clock. Or perhaps the sense shift was based on an advance in the customary time of the (secular) midday meal.
対訳:修道院において、また祝祭日には9時課に断食を終えることになっていましたが、恐らくそれが時間を繰り上げるための要因にもなったと思われます。あるいは(世俗的に)習慣的な昼食の時間が前に進んだことも原因があるかもしれません。
(出典:Online
etymology dictionary)
聖職者といえども人間ですから日の出から9時間目まで食事を摂れないというのは大変なものだと思います。
一般の人にとっても古くは食事の時間が今よりも遅く、それが徐々に前倒しにされたからという説もあるそうですが、スペインでは今でも午後2時から4時の間がランチタイムとされているのは昔からの名残なのかもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"noon"「正午」について調べてみました。
今でこそ12時を指す表現ですが、ルーツは数字の「9」が関わっていたのですね。
またキリスト教(正教会)の日課、という文化的な影響も大きいことが分かりました。
語源を尋ねるとその地域の文化や習慣にも触れることができて興味深いですね。
今後も興味深い発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。