表現豊かなスペイン語の「ひげ」を調べてみた!

2023/07/26

スペイン語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

今回は「ひげ」に関するお話しです。

日本語では「~ひげ」と表現されますが、西洋語では生えている場所によって異なる単語が用いられますね。

例えば英語では、"beard"あごひげ」、"mustache"ひげ」、"whiscars"ほおひげ」と言った具合です。

今回はスペイン語における「ひげ」の表現を調べてみました。


表現豊かなスペイン語の「ひげ」

冒頭に述べた通り英語では3通りの単語が見つかりますが、スペイン語における「ひげ」の表現は英語以上に豊かなようです。

[類語]barbaは下あご,または下あごからほおにかけてのひげ。bigoteは鼻の下のひげ。perillaは下あごのとがった部分に生やすひげ(=~s de chivo)。moscaは下唇の真下のひげ。mostachoはたっぷりした量の口ひげ。patillaはもみあげからほおにかけてのひげ。

(出典:小学館 西和中辞典 2版)

辞書によれば生えている場所によって6通りの単語があるようです。

これだけ類語があるのは面白いですね。それぞれの単語についてもう少し深堀してみましょう。

1.barba「あごひげ」

最初の"barba" [バルバ]は英語でいうところの"beard"「あごひげ」に相当します。

この語源は以下の通りルーツを遡ることができると推測されています。

スペイン語barba←ラテン語barba、初期*farba←イタリック祖語*farβā←印欧祖語*bʰardʰeh₂「あごひげ」

(参照:en.wiktionary

変遷をたどる中で子音の変音(語頭の"b"  "f"など)が起こっており、印欧祖語の形を見れば英語"beard"と同源であることが伺えます。

ちなみに、英語で理髪師のことを"barber" [バーバー]と言いますが、この語もラテン語"barba"にルーツがあります。

その昔、理髪師の仕事があごひげを剃ることがメインであったことに由来するそうです。

2.bigote「口ひげ」

英語では口に生やすひげを"mustache" [マスタッシュ]と表現し、これはスペイン語でも"mostacho"(後述)という相当語がありますが、他にも"bigote" [ビゴーテ]という表現があります。

一口に「口ひげ」と言っても、鼻の下だけに生えているひげから、口まわりを一周するように生えているひげもありますが"bigote"は前者のひげと言えます。

この語源には興味深いものがあります。

Perhaps from German bei Gott (“by God”), because, when taking an oath, some men, once they said "by God", aimed at the upper lip with the index finger, symbolising forming the cross with the fingers and kissing it.

対訳:恐らくドイツ語bei Gott「神に誓って」から、誓いを立てるとき男性が人差し指を上唇に当て「神に誓って」と言ったことによる(ひげに人指し指を当てることで十字架を形作りそれにキスをするイメージを表している)。

(参照:en.wiktionary

ゲルマン人が戦闘などの前に立てた神への誓いがルーツだというものです。

3.perilla「あごひげ」

あごに生やすひげとして"barba"を最初に紹介しましたが、"perilla" [ペリーリャ]が表すあごひげは特に下あごの先に生やすひげを指す語です。

英語では"goatee" [ゴーティ]、日本語では「ヤギひげ」とも表現できます。

英語も日本語もヤギのような見た目から名付けられています。

一方でスペイン語"perilla"の語源は以下の通りです。

pera + -illa. From Old Spanish pera, from Vulgar Latin *pira, from the plural of Latin pirum, reanalyzed as a feminine singular.

対訳:pera + -illa(指小辞)。古スペイン語pera←俗ラテン語*pira←ラテン語pirum(中性名詞)の複数形を女性名詞として再分析した結果。

(参照:en.wiktionary

興味深いことにスペイン語"pera"、更にルーツのラテン語*pirapirumは「洋ナシ」という意味の単語です。

そこに"-illa"という指小辞がつくと、さしずめ「小さな洋ナシ」くらいの意味が原義と言えます。

下あごの先にちょっと生やしたひげが小さな洋ナシのように見えたのでしょうか興味深い命名ですね。

4.mosca「唇の下のちょびひげ」

「ちょびひげ」と言うと鼻の下にちょこっと生やしたひげのイメージですが、唇の下に生やすちょっとしたひげはスペイン語で"mosca" [モスカ]と言います。

ところが、この単語を辞書で引くとその主な意味は「ハエ」とあります。

直接のルーツであるラテン語"musca"も「ハエ(より広く、飛ぶ虫を指す)」という意味です。

ひげの意味を指すようになったのは、ちょっとしたひげが「ハエ」のように見えたからでしょうか。

ちなみにフランス語"mouche"「ハエ」という語には、「唇の下のちょびひげ」の他に「付けぼくろ」という意味もあります。

やはり付けぼくろが「ハエ」のように見えたからでしょうか。

顔に「ハエ」を付けているというのはあまり良いイメージがしませんが、それだけにこの命名は面白いですね。

5.mostacho「たっぷりした量の口ひげ」

単なる口ひげではなく、たっぷりした量の口ひげは"mostacho" [モスターチョ]というスペイン語があります。

上の2."bigote"の項でもちらりと紹介した通り英語"mustache"に相当しますが、ルーツはイタリア語"mostaccio" [モスタッチョ]からの借用語だそうです。

From Vulgar Latin *mustaceum, from Byzantine Greek μουστάκιον (moustákion), diminutive of (Doric) Ancient Greek μύσταξ (mústax, “upper lip”)

(参照:en.wiktionary

そのルーツはギリシャ語にまで遡り、原義は「上唇」にあったことが伺えます。

6.patilla「ほおひげ」

もみあげからほおに掛けてのひげは"patilla" [パティーリャ]です。

先程の"perilla"のように語尾が"-illa"となっています。ということは、この単語も元の語に指小辞がついた形だということでしょうか。

pata + -illa. From Vulgar Latin *patta (“paw, foot”).

対訳:pata + -illa(指小辞)。俗ラテン語*patta「動物の足」から。

(参照:en.wiktionary

その通りで、"pata"「動物の足」に指小辞が付いた形が語源でした。

もみあげからほおに掛けて生えたひげの形が、動物の前足や後ろ足のように見えたことが由来かと思われます。

ちなみに"pata"(俗ラテン語*patta)のルーツは、動物が足で地面を叩く音から生まれた擬音語であると考えられています。

日本語でも「パタパタ」という擬音語が、足音や羽ばたきの音の表現に使われていますがスペイン語(ラテン語)も同様の成り立ちだということですね。

最後に

いかがでしたでしょうか。今回はスペイン語で「ひげ」を表す単語について調べてみました。

生えている場所によって6通りもの単語があるのは驚きですが、そのルーツも「ハエ」や「洋ナシ」から派生した単語もあり興味深いものがありました。

今後も語学を通じて面白い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。

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様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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