ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
どの言語であっても音やつづりが似ていても意味が全く異なる単語というのは存在するものだと思います。
取り違えのないよう注意しなければなりませんが、そうしたよく似た単語の中には実は語源的に深い関係性を持つ例もあります。
今回は、その一例である"again"と"against"について調べてみた結果をまとめます。
"again"と"against" それぞれの意味は?
どちらの単語も中学校で学習する英単語の範疇ではないでしょうか。
改めてその品詞と意味を確認してみると以下の通りです。
1.again
品詞:副詞
意味:再び、もう一度
2.against
品詞:前置詞
意味:~と対立・対決して、~に反対して、~と対照をなして、~と対比して
(参照:「プログレッシブ英和中辞典(第5版)」から主な意味を引用)
比べてみるに品詞も意味も全く異なる両者ですが、その見た目はよく似ています。
実はこの両者は語源を遡ると、同じルーツに由来するそうなのです。
"again"の語源とは?
両者の関係を紐解くべく、まずは"again"の語源を調べてみましょう。
Online
etymology dictionaryによれば、まず以下の情報が得られます。
late Old English agan, from earlier ongean (prep.) "toward; opposite, against, contrary to; in exchange for," as an adverb "in the opposite direction, back, to or toward a former place or position," from on "on" + -gegn "against, toward,"
対訳:後期古英語agan、初期のongean(前置詞として)「~に向かって、~に対して、反して、~の代わりに」または副詞として「反対方向に、後ろに、以前の方に(向かって)」から、前置詞on「~に」+-gegn *「~に対して、~に向かって」の複合形。
(出典:Online
etymology dictionary)
何と、"again"は本来"against"のように「反対」の意味を持っていたのです。
その裏づけとして"again"の後半部を構成する"-gegn"は、ゲルマン語起源の他言語では「反対」のイメージを残しています。
from Germanic root *gagina (source also of Old Norse gegn "straight, direct;" Danish igen "against;" Old Frisian jen, Old High German gegin, German gegen "against, toward," entgegen "against, in opposition to")
対訳:ゲルマン語由来の*gagina(古ノルド語gegn「真っすぐな、正しい」、デンマーク語igen「~に対して」、古フリジア語jen、古高ドイツ語gegin、ドイツ語gegen「~に対して、~に向かって」、entgegen「~に対して、~の反対に」と同源)から
(出典:Online
etymology dictionary)
では何故、"again"が現代英語では「再び」という意味になったのでしょうか?
Online
etymology dictionaryでの解説から考えるに、古形"ongean"の副詞用法「後ろに、以前の方に(向かって)」が影響しているようです。
In Old English, eft (see eftsoons) was the main word for "again," but this often was strengthened by ongean, which became the principal word by 13c.
対訳:古英語の時代はeft(eftsoonsを参照)が「再び」を意味する主な語であったが、しばしば意味を強めるため使われたongeanが13世紀までには主要な単語となった。
(出典:Online
etymology dictionary)
その歴史はなかなか古く、早くも13世紀頃には「再び」を意味するようになっていたようですね。
"against"の語源とは?
ここからは"against"の語源を遡って調べてみます。
実は、"against"のルーツは後期古英語の"agan"にあります。
12c., agenes "in opposition to, adverse, hostile; in an opposite direction or position, in contact with, in front of, so as to meet," originally a southern variant of agan (prep.) "again" (see again), with adverbial genitive.
対訳:12世紀、agenes「~の反対側に、逆の、敵対する、反対の方向・位置に、~と接して、~の前に、~と会うために」、本来は前置詞agan「再び」の(イングランド)南部における変異形(againを参照)であり、副詞的属格のついた形。
(出典:Online
etymology dictionary)
当時の語形"agan"に"adverbial
genitive"「副詞的属格」がついてできた"agenes"が由来というわけですが、この「副詞的属格」とは何でしょう?
英語版Wikipedia によれば、『副詞として機能する名詞の属格形』とあります。
"genitive"「属格」とは英文法では所有格とも呼ばれるもので、日本語の助詞「~の」のように所有などを表しますが、対象の単語を属格にすることで副詞として用いることができるというのです。
とりわけ古英語から中英語期にかけて副詞的属格の表現はよく用いられたそうで、現代英語の"always"も"all way"に語尾"-s"がついた属格形が由来だとされています。
(参照:en.wikipedia.org/wiki/Adverbial_genitive)
ちなみに、現代語では"against"と更に語尾"-t"もくっついています。これは最上級形の語尾"-st"の影響によるものだそうで、意味を強める意図があったのかもしれませんね。
以上のことから、本来は「反対」を意味した"again"のルーツ"agan"は早々に「再び」の意味になってしまいました。
しかしながら副詞的属格の形"agenes"が「反対」の意味を受け継いで現代語"against"になったというわけでした。
意味の異なる"again"と"against"がよく似た形である理由は、同じルーツを持っていたからだったのですね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は英語"again"と"against"について考えてみました。
品詞も意味も異なる両者ですが、調べてみると同じルーツを持つというのですから驚きですね。
一見すると何の関係も無さそうな単語も調べてみると面白い発見があるものです。
今後も興味深い例があれば当ブログにて紹介していきたいと思います。