英語"talent"「才能、タレント」の本来の意味とは?

2023/08/23

英語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

時代や地域によって言葉の意味や用法が変化するというのは洋の東西を問わず見られます。

今回はカタカナ英語の1つでもある"talent"「タレント」について調べてみたいと思います。


日本語「タレント」と英語"talent"

英語から取り入れられた「タレント」という語はテレビ等で活躍する芸能人を指すことに用いられます。

アメリカ英語の"talent"にもそのような用法はあるようですが(例"talent agency"が日本で言うところの「芸能プロダクション」)、本来の意味は単に「才能」や「才能を持った人()」といった意味です。

[]1.(生来の)才能、素質;手腕、力量、腕前、2.〔集合的に〕才能のある人々

(参照:プログレッシブ英和中辞典 5版)

ところが更に時代を遡ってみますと、"talent"の原義は「才能」とは異なるものでした。


"talent"の語源とは?

Online etymology dictionaryから、"talent"の歴史を見てみましょう。

late 13c., "inclination, disposition, will, desire," from Old French talent (12c.), from Medieval Latin talenta, plural of talentum "inclination, leaning, will, desire" (11c.), in classical Latin "balance, weight; sum of money," from Greek talanton "a balance, pair of scales," hence "weight, definite weight, anything weighed," and in later times "sum of money,"

対訳:13世紀後半「傾向、気質、意志、欲望」← 古フランス語talent12世紀)← 中世ラテン語talentatalentumの複数形)「傾向、性向、意志、欲望」(11世紀)← 古典ラテン語期には「天秤、重さ;合計金額」← ギリシャ語talanton「天秤」転じて「重さ、定量、重さのあるもの」後に「金額」が派生

(出典:Online etymology dictionary

もともとはギリシャ語において「天秤」という意味の語でした。天秤は物の重さを測る機能から、「重さ、定量」という意味の派生は想像に難くありません。

また、天秤は重い方のお皿が下に傾くことから「傾向、気質」という意味が生まれたのでしょう。

更に、昔の貨幣価値は素材である金や銀の重さにありました。そこからお金に関する意味が後世生まれたと言えます。


"talent"が「才能」を意味するようになった訳とは?

さて、現代"talent"が「才能」という意味を持つようになったのは、このお金にまつわる話がルーツであるようです。

先述の通り昔の貨幣価値が金や銀の重さで判断されることから、ギリシャ語の"talanton"は質量の単位であり通貨の単位でもありました。

ギリシャ語-英語辞書を共同で編纂したHenry George LiddellRobert Scottによれば、"talanton"は銀57.75ポンド(約26kg)相当であったようです(参照:Online etymology dictionary)。

この"talanton"という単位は聖書においても登場します。マタイ伝251430節、「タラントンのたとえ」という話があります。

この話は主人があるとき外出することとなり、三人の僕(しもべ)に対しそれぞれ5タラントン、2タラントン、1タラントンを預けていきます。

5タラントンと2タラントンを預かった僕はそれを元手に金額を倍に増やし、結果、帰ってきた主人に褒められます。一方で1タラントンを預かった僕は、金額を増やしたところで主人に取り上げられることを恐れ土中に埋めて隠しておきますが、それが却って主人を怒らせてしまいます。

この話は、それぞれの人に与えられた力を発揮せよという「たとえ」話とされています。

確かに話のように5タラントンを預かる者もいれば、1タラントンのみという者もいるかもしれませんが、その多寡に関わらず預かったものを活かすことを主人(キリスト教会における神)は望んでいるということです。

そしてその預かったものは実際には各人が生まれ持った能力、才能であるということから、"talent"の現在の意味「才能」が生まれたとされています。

こうして、元は「天秤」という意味であった"talanton"が重さやお金の単位となり、更には聖書のエピソードから「才能」という意味が生まれ英語"talent"になったというわけでした。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は英語"talent"「才能」という単語について調べてみました。

時代とともに意味が発展していった過程が分かりましたが、その背景には西洋において重要なキリスト教会の教えが関わっていました。

語学からはこうした現地の文化や歴史も学ぶことができ、やはり奥深さを実感します。

今後も興味深い発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。

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プロフィール

Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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