ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
ひとつの言語のなかで、単語の機能や役割に応じて分類されたものを品詞と呼びます。
代表的な品詞としては名詞、形容詞、動詞、副詞が挙げられ、これらは英語にも日本語にも見られます。
一方で前置詞や冠詞のように英語にあっても日本語にはない品詞もあります。
また単語と品詞は常に一対一対応ではなく、一つの単語が複数の品詞として用いられるケースがありますね。
なかにはルーツの違いから品詞が異なると意味が全く異なる場合もあるようです。
今回は、そんな事例を紹介します。
ゲルマン祖語から派生した"gift"の意味とは?
デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語、この3つの言語は地理的な要因はもちろんのこと共通のゲルマン祖語から派生したという歴史的背景から、文法や語彙の面でよく似ています。
またゲルマン祖語はドイツ語や英語のルーツでもあります。
そこで上に挙げた5つの言語には共通の祖語から派生した単語がいくつもあります。
その1つが、"gift"という単語です。
この単語はゲルマン祖語*gebaną「与える」から派生した*giftizに由来します(参照:en.wiktionary.org/wiki/gift)。
よって、英語では「贈り物、プレゼント」を意味します。
ところが、ドイツ語における"Gift"※には「贈り物」という意味はありません。
※ドイツ語の名詞は常に語頭を大文字で書くことになっています。
ドイツ語では「毒」(英"poison")を意味するのです。
本来は英語同様「贈り物」という意味であったものの、ギリシャ語やラテン語の用法を借用したことから現代では「毒」の意味となりました。
The word has been used as a euphemism for "poison" since Old High German, a semantic loan from Late Latin dosis (“dose”), from Ancient Greek δόσις (dósis, “gift; dose of medicine”).
対訳:この単語は、古代ギリシャ語dósis「贈り物、薬の一服」に由来する後期ラテン語dosis「薬の一服」の意味を借用し、古高地ドイツ語以来「毒」の婉曲表現となりました。
(出典:en.wiktionary)
「与える」ことが原義でありながら、ドイツ語の"Gift"は絶対にもらいたくありませんね。
北欧3言語における"gift"の意味とは?
さて、デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語の北欧3言語における"gift"はドイツ語の影響により名詞で「毒」という意味を持つようになりました。
ところがこの3言語では形容詞の場合、「毒」でも「贈り物」でも無い意味で用いられるのです。
その意味は「既婚の、結婚している」です。
名詞の「毒」とは全く異なる意味ですが、これはどういうことでしょうか。
Wiktionaryによると形容詞の用法は古ノルド語の時代に生まれたようです。
from Old Norse gipta (“give away in marriage”), from Proto-Germanic *giftiz.
対訳:ゲルマン祖語*giftizから派生した古ノルド語gipta「結婚式で(花嫁を)新郎に引き渡す」に由来。
(出典:en.wiktionary.org/wiki/gift)
これはスウェーデン語"gift"の語源を参照しましたが、古ノルド語からデンマーク語やノルウェー語でも同様の展開が見られます。
ルーツはゲルマン祖語*giftiz「与える」ことである点で、英"gift"「贈り物」や独"Gift"「毒」と同じであると言えます。
ただ、北欧でのみ「与える」という意味が「花嫁を新郎に与える」という意味に発展したために、現代の形容詞用法が生まれたというわけですね。
最後に
いかがでしたでしょうか?今回は"gift"という単語について調べてみました。
ゲルマン祖語*giftiz「与える」を一つのルーツとしながらも、ギリシャ語やラテン語の影響から「毒」の意味が生まれたドイツ語の例や、結婚に関する特別な意味が派生した北欧3言語の例と、地域によって複数の意味が派生したのは面白いですね。
今後もこうした発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。