【フランス語とスペイン語】生きるのに必要なモノは「食べ物」?「住まい」?

2023/12/27

単語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

当ブログでは度々取り上げていますが、フランス語とスペイン語はいずれもラテン語という共通のルーツから発展した言語であり語彙や文法面でよく似ています。

ただ同じルーツを有していても、それぞれの言語において別の意味が用いられる例もあります。

今回は、その一例であるフランス語"viande"とスペイン語"vivienda"を紹介します。


共通のルーツを持つ"viande"と"vivienda"

今回紹介する次の単語は、どちらも共通のルーツに由来します。

 フランス語 viande [ヴィアンド]

 スペイン語 vivienda [ビビエンダ]

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 どちらもラテン語"vivenda" [ウィーウェンダ]に由来。

もともとラテン語の"vivo"「生きる」という動詞があり、その活用の1つ動形容詞形が"vivendus"です。

動形容詞とは名前の通り動詞から派生した形容詞のことであり「・・・されるべきもの」という意味を表します。

つまり"vivendus"は「生かされるべきもの」が原義になります。

(ちなみに、英語"legend"「伝説」の語源もラテン語"legere"「読む」の動形容詞"legendus"に由来し「読まれるべきもの」が原義です)

さて、"vivendus"は文法的には単数男性形であり、単数女性形は"vivenda"とする必要があります。

この"vivenda"が直接的なルーツとなり、異形"vivanda"を経てフランス語の"viande"、スペイン語の"vivienda"が派生したというわけです。


意味が異なる"viande"と"vivienda"

ルーツを同じにしながらも、現代フランス語とスペイン語ではその意味は異なります。

 フランス語 viande「肉、食肉」

 スペイン語 vivienda 「住まい、住居」

原義のラテン語「生かされるべきもの」が必要とするものが、フランス語圏では「肉」でありスペイン語圏では「住まい」と解釈されたのは面白いですね。

ちなみに、フランス語"viande"は古くは広く「食べ物」を指す語でした。

En ancien français, « viande » signifiait plutôt « nourriture », vivenda signifiant en latin « ce qui sert à la vie » ; la viande en tant que « chair animale » était désignée par un mot de la même famille, la carne.

対訳:古フランス語では、viandeはむしろ「食べ物」を意味し、ラテン語のvivendaは「生きるのに役立つもの」という意味です。「動物の肉」の意味では、同じラテン語系のcarneが用いられていました。

(出典:fr.wikipedia/viande

生きるために必要なものとして「肉」が重要であることから、意味の変化が起こったのかもしれません。


フランス語では定着しなかった"carne"「肉」

この「肉」はスペイン語では、"carne" [カルネ]という単語が用いられます。

"carne"はラテン語の"carnis"(主格形"caro")に由来しますが、現代フランス語では一般的に用いられません。

辞書によれば俗語で「質の悪い肉、堅い肉」という意味が見つかりますが(参照:プログレッシブ仏和辞典 2版)、これはルーツとなったノルマン語の影響にありそうです。

Malgré l’apparence, l’emprunt à l’italien carne, « viande », est peu probable. C’est un dérivé du normand carne ou une apocope de carnage qu’on trouve en lorrain dès 1807 au sens de « mauvaise viande ». Le normand est issu du latin caro, carnis (« chair, viande »).

対訳:その語形にも関わらずイタリア語carne「肉」からの借用とは考えられていない。これはノルマン語carneからの借用、もしくは1807年以降ロレーヌ地方で「悪い肉」という意味で見られるcarnageの語末音消失形に由来します。ノルマン語はラテン語caro, carnis「肉」に由来します。

(出典:fr.wiktionary/carne

フランスにおいて、ラテン語ルーツの"carnis"「肉」は一旦ノルマン語(フランス北西部に定住したヴァイキング(ノルマン人)が用いた言語)を経由して借用されたものの、ネガティブな意味が影響して広まらなかったのだと思われます。

ノルマン人はもともと北欧からフランスへと移動してきたため、彼らの元の言葉はゲルマン系です。彼らにとってもラテン語由来の"carnis"は二次的な使用に留まり、そのためにネガティブな意味「悪い肉」という用法になったのかもしれませんね。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回はラテン語"vivenda"から発展したフランス語"viande"とスペイン語"vivienda"を比較してみました。

原義「生かされるべきもの」から、地域によって異なった意味で発展していくところに言葉の面白さがあるように思います。

更に深堀りしてみれば、フランス語圏とスペイン語圏の言葉の捉え方の違いも見えてくるかもしれませんね。

今後も興味深い発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。

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様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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