ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
息子のおもちゃに、最近「ダイカットマグネット(パズル)」というものを買いました。
裏面がマグネットで、表面は乗り物のイラストの一部分が描かれたシートです。
イラストをつなぎ合わせてパズルのように遊べます。100円均一のお店で買えるので値段も手ごろです。
この「ダイカット」というのは英語"die cut"からきていて、日本語では「型抜き」のことです。
ところで英語"die"という動詞は「死ぬ」という意味だと学習しました。
"die"と"cut"「切る」という物騒な2単語で、なぜ「型抜き」という意味になるのでしょうか?
今回は"die cut"について調べてみました。
なぜ"die cut"「型抜き」という意味になるのか?
では、なぜ"die cut"が「型抜き」という意味になるのか考えてみましょう。
英語版Wiktionaryにて"die
cut"を検索すると、その定義から手掛かりが得られそうです。
その定義を以下に引用します。
(manufacturing, intransitive) To cut with dies; to use a die to shear webs of low-strength material.
対訳:(製造、自動詞)diesを用いて切ること、低強度素材の金属板を切るためにdieを使うこと
(出典:en.wiktionary.org/wiki/die-cut)
文脈から、"die"というのは名詞であり"cut"するための道具なのであると推測できます。
ということは、動詞"die"「死ぬ」とは無関係ということなのでしょうか。
用法が動詞ではなく名詞であるという点に注意して、今度は"die"の意味を調べてみましょう。
英語版Wiktionaryによると複数の意味が見つかります。以下にまとめます。
1.さいころ(複数形dice)
2.柱の台座(複数形dies、以下同)
3.特定の形に切断する器具
4.金属やプラスチックを成形するための金型
5.コインやメダルにエンボス加工を施す器具
(参照:en.wiktionary)
なんと、名詞"die"は「さいころ」の単数形でした。複数形になると不規則な語形で"dice"ですが、むしろ「さいころ」= ダイスのイメージだったので驚きです。
また、それ以外にも切断する器具や成形用の金型といった道具の意味もあり、こちらの複数形は規則的に"-s"をつけて"dies"です。
以上のことから、"die cut"とは「特定の形に切断する器具を用いて切ること」ということになり、ゆえに「型抜き」という意味になると考えられます。
ちなみに単数"die"では動詞"die"と綴りが同じであることを避けるためか、イギリス英語で「さいころ」は単複ともに"dice"を用いるそうです(アメリカ英語では単数"die"、複数"dice")。
"die / dice"「さいころ」の語源とは?
引き続きこの単語についてもう少し調べてみましょう。
まず、"die"の語源についてです。
from Old French de "die, dice," which is of uncertain origin. (中略), perhaps from Latin datum "given," past participle of dare "to give" (from PIE root *do- "to give"), which, in addition to "give," had a secondary sense of "to play" (as a chess piece); or else the notion is "what is given" (by chance or Fortune).
対訳:起源不詳の古フランス語de「さいころ」から。(中略)恐らくラテン語dare「与える」(印欧祖語の語根*do-より)の過去分詞形datum「与えられた」に由来し、「(チェスの駒のように用いて)遊ぶ」という二次的な意味や「(幸運または偶然により)与えられた」という概念から生まれたものと思われる。
(出典:Online
Etymology Dictionary)
どうやら、さいころを振って出た目が「与えられた」ものだという考えに基づくようです。
では"die"「さいころ」の複数形が"dice"というのはどういうわけでしょうか。
今度は"dice"の語源を紐解いてみます。
plural of die (n.), early 14c., des, dys, plural of dy, altered 14c. to dyse, dyce, and 15c. to dice. "As in pence, the plural s retains its original breath sound, probably because these words were not felt as ordinary plurals, but as collective words" [OED].
対訳:名詞dieの複数形。14世紀初め、desやdys、dyの複数形が14世紀中にdyseやdyceへ変化し15世紀にはdiceとなった。penceの例のように、複数形sが無声音のままであるのは、恐らくこの語が複数形としてではなく集合名詞のように捉えられた為と思われる(OED)。
(出典:Online
Etymology Dictionary)
本来、複数形では"-s"が「ズ」と濁って発音されますね(例"dies" [ダイズ])。
ところがこの語は複数形として見なされにくかったようで、その結果として変則的な複数形"dice"という語が生まれ、発音も[ダイス]となったようです。
その後17世紀後半にはエンボス加工(また、その押し型)の意が生まれたようですが、「コインのように両面から刻印するためペアで使われることが多かった」ことが理由とされていました(参照:etymonline)。
日本でも昔、2つのさいころを用いた丁半博打がありましたが2つ = ペアの概念から意味が広がり今回の"die cut"に至っていると言えそうです。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は"die cut"という英語について考えてみました。
息子のおもちゃで"die cut"「ダイカット」という表現はよく目にしていたのですが、この場合の"die"は動詞では無く名詞で、かつ元は「さいころ」から来ていたのですね。
語源をさかのぼることで"die / dice"という不規則な複数形の存在も知ることができました。
今後も言葉に関する疑問は積極的に調べていきたいと思います。