ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
「猫舌」は熱い食べ物・飲み物が苦手な人を指す日本語ですが、英語にそのまま置き換えて"cat’s tongue"「猫の舌」としても伝わりません。
英語で「猫舌」であることを伝えるには、"One’s
tongue is too sensitive to heat."「舌が熱に敏感だ」のような表現がよいようです。
ちなみにフランス語では"langue de
chat"が「猫の舌」の意味ですが、やはり熱いものが苦手という意味は無く、もっぱら洋菓子「ラングドシャ」を指しますね。
このような慣用表現は大抵、他の言語ではそのまま置き換えても通じません。今回は、ドイツ語における動物を用いた慣用表現を4つ紹介したいと思います。
1.Pferdestärke「馬の強さ」
古くから人を乗せたり荷車を引いたり家畜として重宝されてきた馬ですが、ドイツ語で"Pferde"「馬」+ "Stärke"「強さ」を組み合わせた"Pferdestärke"「馬の強さ」とはどんな意味で使われる言葉でしょうか?
・・・
正解は「馬力」です。
日本語でも「馬」が使われていますが、この語はもともと英語"horsepower"をドイツ語に翻訳して借用したことに由来します。
そもそも「馬力」は産業革命期のイギリスで蒸気機関を発明したジェームス・ワットが考案した単位です。
Online
etymology dictionaryによれば、当時、一分間に重量33,000ポンド(約15,000kg!)を1フィート(約30cm)分運ぶことができる力が一馬力とされたそうです。
2.Bärenhunger「熊の空腹」
ドイツの首都ベルリン(独語"Berlin")の名は、「熊」(独語"Bär")に由来するという民間語源があります。
そのため、ベルリンの紋章や旗には「熊」の姿が描かれています。
では、ドイツ語で"Bär"「熊」+ "Hunger"「空腹」を組み合わせた"Bärenhunger"「熊の空腹」とはどんな意味で使われる言葉でしょうか。
・・・
正解は「ひどい空腹」です。
調べたところ熊は重量にして10kg以上の食べ物を一日に消費するそうです。それだけの食事を必要とするのであれば、「熊の空腹」は大変ひどいものだと想像できます。
ところがドイツ語版Wikipediaによると、この表現の由来は以下の説があるそうです。
Der Begriff leitet sich von der Beobachtung ab, dass Bären zuweilen ihre Pfoten belecken. Da Bären Winterschlaf halten können, glaubte man früher, dass sie aus ihren Tatzen Nahrung saugen könnten, weil ihre Pfoten durch den Speichel mit milchigem Schaum bedeckt werden.
対訳:この表現は、ときどき足を舐める熊の姿に由来します。昔の人は熊が舐めた唾液が乳白色の泡状になって足についているのを見て、足から食べ物を吸い取ることができるから熊は冬眠することができるのだと考えていたのです。
(出典:de.wikipedia.org/wiki/Bärenhunger)
足を舐める姿が度々見られたことから、それだけ空腹が続いていると考えられたのですね。昔の人の面白い発想から、生まれた慣用表現だと言えます。
3.Hundekälte 「犬の寒さ」
日本の童謡「雪」でも『犬は喜び庭駆けまわり~』と歌われるように、「犬」には寒さに強いイメージがあります。
ドイツ語で"Hund"「犬」+ "Kälte"「寒さ」を組み合わせた"Hundekälte"「犬の寒さ」とはどんな意味で使われる言葉でしょうか。
・・・
正解は「ひどい寒さ」です。
こちらのサイトによれば、複合語における"Hunde-"「犬の」という要素は動物の劣等生や侮蔑が暗示されることがあるようです。
そうした概念から「犬」がネガティブな意味で用いられ、「ひどい寒さ」という表現が生まれたのでしょう。
実際にドイツ語では「犬」を使った他の表現に"Hundeleben"があります。
"Hunde"「犬」+ "Leben"「生活」で "Hundeleben"「犬の生活」ですが、これは「みじめな生活」という意味です。
日本語にも「犬死に」というネガティブな表現で「犬」が使われます。身近な動物である一方で、慣用表現では冷遇されてしまうのは何ともかわいそうです。
4.Katzenjammer「猫の嘆き」
「猫」もまた人間にとって古くから身近な動物です。
自立的、マイペースといったイメージのある「猫」ですが、ドイツ語で"Katze"「猫」+ "Jammer"「嘆き」を組み合わせた"Katzenjammer"「猫の嘆き」とはどんな意味で使われる言葉でしょうか。
・・・
正解は「二日酔い」です。
猫は体内でアルコールを分解することができないそうで、そもそもアルコール摂取は絶対にダメなのですが、なぜ「二日酔い」に"Katze"「猫」が登場したのでしょう?
この"Katzenjammer"は元々18世紀の学生言葉で「良心の呵責」という意味であったのが、一説によるとかつて「二日酔い」の別表現"Kotzen-Jammer"("Kotzen"「吐く」+ "Jammer"「嘆き」)と融合したのだそうです(参照:de.wiktionary及びen.wiktionary)。
ちなみに"Katzenjammer"は古い表現で、最近は"Kater"の方が用いられるそうです。
実はこの"Kater"も本来は「オス猫」の意味なのですが、"Katarrh"「カタル、鼻と喉の炎症」との類似性や過去の"Katzenjammer"の用例から「二日酔い」の意味で用いられているのだそうです。
いずれにせよ関係ないところで引合いに出された「猫」にしては、いい迷惑かもしれませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、ドイツ語における動物が使われる慣用表現を調べてみました。
"Horsepower" → "Pferdestärke"「馬力」のように類推できるものから、"Katzenjammer / Kater"「二日酔い」のようにパッと分からないものまで4つ挙げました。
この他にも例はあるので、いろいろ探してみると面白い発見があるかもしれません。
今後もこうした表現があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。