英語"take"に、その座を「奪われた」単語とは?

2024/06/24

英語

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ハロー。Yumaです。

皆様、今日も楽しんで語学してますか?

当ブログでも度々取り上げておりますが、英語はドイツ語やオランダ語等と共通のルーツ(ゲルマン祖語)に由来すると考えられています。

例えば、以下の動詞は英語、ドイツ語、オランダ語の間でとてもよく似ていますが、いずれも同じルーツから派生した為です。

 食べる 英語eat、独語essen、蘭語eten

 行く  英語go、独語gehen、蘭語gaan

 持つ  英語have、独語haben、蘭語hebben 

上に挙げたように、特に基本的な単語においてよく似た形を確認できますが、次のように似ていない例も存在します。

 取る  英語take、独語nehmen、蘭語nemen

ドイツ語とオランダ語がよく似ている一方、英語だけ経路が異なります。

今回は、この"take"について調べてみました。


英語"take"の語源とは?

では"take"の語源から、そのルーツをたずねてみましょう。

Middle English taken, from late Old English tacan "to grip, seize by force, lay hold of," from a Scandinavian source (such as Old Norse taka "take, grasp, lay hold," past tense tok, past participle tekinn; also compare Swedish ta, past participle tagit).

対訳:中英語taken、後期古英語tacan「掴む、力ずくで取る、握る」、スカンジナビア語起源(古ノルド語taka「取る、掴む、握る」、過去形tok、過去分詞形tekinn、スウェーデン語のta、過去分詞形tagitも参照)。

(参照:Online etymology dictionary

"take"は北欧出身の単語だったと考えられているようです。

とはいえ、北欧の言語(スカンジナビア語)もそのルーツはゲルマン祖語にあるようです。以下の引用部を見てみましょう。

This is reconstructed to be from Proto-Germanic *takan- (source also of Middle Low German tacken, Middle Dutch taken, Gothic tekan "to touch"), from Germanic root *tak- "to take," which is of uncertain origin, perhaps originally meaning "to touch"(中略)As the principal verb for "to take," it gradually replaced Middle English nimen, from Old English niman, from the usual West Germanic verb, *nemanan

対訳:この単語は次のように再構築される。ゲルマン祖語*takan-(中低ドイツ語tacken、中期オランダ語taken、ゴート語tekan「触る」と同源)→ゲルマン語の語根*tak-「取る」から、この起源は不詳だが恐らく本来の意味は「触る」だと思われる。(中略)「取る」という意味の主要な単語として、次第に中英語のnimen(古英語niman、通常の西ゲルマン語の動詞*nemananに由来)から置き換えられました。

(参照:Online etymology dictionary

英語の母国であるイングランドは歴史的に北欧のバイキング(デーン人)の支配をうけた時代があり、その際に北欧からの言語流入がありました。

その影響力が非常に大きかった為か、本来の「取る」を意味した動詞"nimen"が置き換えられて、英語においてはドイツ語やオランダ語のものとは異なる単語が定着したというわけですね。


その座を奪われた動詞"nimen"のその後とは?

さて、「取る」という意味の動詞は中英語期まで"nimen"であったのが、北欧系の"take"にその座を奪われてしまったというわけでしたが、"nimen"はその後どうなってしまったのでしょうか。

実は表舞台から全く姿を消してしまったということは無く、ある単語に痕跡を残しています。

それが「かじかむ、しびれた」という意味の英語"numb"です。

この単語の語源は、以下の説が考えられています。

c. 1400, nome, "deprived of motion or feeling, powerless to feel or act," literally "taken, seized," from past participle of nimen "to take, seize," from Old English niman "to take, catch, grasp" (from PIE root *nem- "assign, allot; take").

対訳:1400年頃、nome「動きや感覚が奪われた、感じたり動いたりする力が無くなった」、原義は「取られた、掴まれた」、nimen「取る、掴む」の過去分詞形、古英語niman「取る、掴む、握る」(印欧祖語の語根*nem-「割り当てる、取る」に由来。

(参照:Online etymology dictionary

現在の「かじかむ、しびれた」という意味は、感覚が奪われたというイメージから派生したものだと思われます。

ところで"numb"には発音されない子音"-b"がつづりに含まれていますが、元々の語源"nimen"や過去分詞形"nome"にも"-b"は含まれておりません。

この非語源的な"-b"17世紀頃から見られるようですが、例えば"comb"「くし」等の他の単語(語源的に"-b"が含まれる)の影響で発生したそうです。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回は英語の動詞"take"について調べてみました。

「取る」という意味の基本的な単語ですが、その背景には本来語から置き換わったという歴史があったのですね。

一方で、その座を奪われた本来語の"nimen"は姿形を変えて"numb"に残っているということも分かりました。

"take"と"numb"の両者にこうした歴史があったというのは面白いですね。

今後もこうした発見があれば、当ブログで紹介していきたいと思います。

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Yuma
様々なヨーロッパの言語を独学し、日々の学習で得た発見や個人的に興味深い語学ネタを発信しています。外国語学習に疲れたとき、息抜きに読んでもらえれば幸いです。

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