ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
フランス料理といえば、ひと昔前は高級なコース料理で敷居の高いイメージがあったかもしれませんが、もちろんそのような料理だけではありません。
現地フランスでは、庶民的な料理を楽しめるカジュアルなお店として「ビストロ(仏語:"bistro")」があります。
今回は、フランス語の"bistro"という単語について調べてみました。
フランス語"bistro"の意味、語源とは?
辞書によると、「居酒屋、安価な小レストラン」とあります(参照:プログレッシブ仏和辞典 第2版)
"bistrot"のように末尾"-t"が付くつづりもあるようですが、発音はいずれも「ビストロ」です。
この語源は、しかしながら起源がはっきりしていません。
可能性として、以下の2つの説があるようです。
1.「下級の召使」説
it is presumed to come from a regional word: bistro, bistrot, bistingo, or bistraud, a word in the Poitou dialect which means a "lesser servant",
対訳:ポワトゥー語で「下級の召使」を意味するbistro、bistrot、bistingoまたはbistraudといった地域言語に由来すると思われる。
(参照:en.wiktionary)
ポワトゥーはフランス中西部の地域名で、中心都市のポワティエは歴史的にアフリカから北上したイスラム勢力を撃退した「トウール・ポワティエ間の戦い」で知られています。
このあたりで話されていた地域言語のポワトゥー語に由来するというのが1つ目の説です。
2.「ブランデーとコーヒーを混ぜた飲み物」説
bistouille, bistrouille, a colloquial term from the northern area of France for a mixture of brandy and coffee, the kind of beverage that could be served at a bistro.
対訳:ビストロで提供されるような、ブランデーとコーヒーを混ぜた飲み物を意味するフランス北部の口語、bistouilleやbistrouilleに由来すると思われる。
(参照:en.wiktionary)
コーヒーにブランデーを加えて飲む方法としては、現代でもカフェ・ロワイヤルというものがあります。
角砂糖にブランデーをしみ込ませ、火をつけて燃えた状態でコーヒーに投入するそうですが、火にかけることでアルコール分は飛ぶもののブランデーの風味が加わり一層美味しくなるのだとか。
この飲み物の名前が由来だというのがもう1つの説です。
いずれにしても正確な由来は分からないようですが、"bistro"という単語が現在の意味で初めて登場したのは1884年であり、次いで"bistrot"というつづりで1892年に記録があるようです。
ロシア語に由来するという話は誤り?
さて、正確な由来が分からない"bistro"の語源に関して、よく知られた面白い話があります。
それが"bistro"はロシア語に由来するのでは?という話です。
A popular folk etymology of the word claims that it originated among Russian troops who occupied Paris following the Napoleonic Wars. In taverns they would shout the Russian быстро (bystro, “quickly”) to the waiters, so that "bistro" took on the meaning of a place where food was served quickly.
対訳:一般的な民間語源によると、その語源はナポレオン戦争後にパリを占拠したロシア軍に由来するとされています。居酒屋で、ロシア軍がウェイターに向かってロシア語でбыстро (bistro)「早く!」と叫ぶので、「ビストロ」は食べ物が早く出てくる場所になったというのです。
(参照:en.wiktionary)
いかにもありそうな、また語源としては優れたネタですね。
実際に古い本でこの説を取り上げているものもありますが、残念ながらこの話は事実とは考えにくく、引用中にある通り民間語源(言語学的な根拠の無い)説に過ぎないようです。
というのもナポレオン戦争は1803年~1815年の間の出来事であり、またロシア軍がパリへ入ったのは1814年の事です。
そこから"bistro"という単語が初めて現れる1884年まで69年の開きがあり、さすがに語源としての繋がりは無いと考えていいでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、フランス語"bistro"について調べてみました。
偶然にも類似したロシア語"быстро"(ちなみに「ブィ」に強勢を置いて[ブィーストラ]のような発音)があることから、後世になって民間語源が生まれたと思われますが正確な起源は不詳でした。
今後の研究が進めばより正確な語源が明らかになったり、これまで信じられていた説が民間語源だったということが判明したりするかもしれませんね。
こうした興味深い例があれば、当ブログにて紹介していきたいと思います。