ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
ヨーロッパの諸言語を学んでいると、「指小辞」というものをよく目にします。
「指小辞」とは名詞などにくっついて、対象に「小さい」や「少し」といったイメージを付与する機能を持つ接辞です。
日本語では「小一時間」という表現における「小~」や、「鍵っ子」の「~子」のような表現が指小辞に当たります。
ドイツ語の指小辞は?
ドイツ語における指小辞は、"-lein" [ライン]とか"-chen" [ヒェン]という接尾辞があります。
"-lein"のついたドイツ語で有名なものに"Fräulein" [フロイライン]があります。古風ですが、「令嬢」とか「未婚女性」という意味です。
"-chen"のついた方は、"Märchen" [メールヒェン]という語が良く知られているでしょう。「童話」とか「おとぎ話」という意味です。
グリム童話は、ドイツ語では"Grimms Märchen"です。
"Fräulein"はもとの"Frau"「女性、婦人」に"-lein"がついた形で、"Märchen"はもとの"Mär"「話、知らせ」に"-chen"がついた形です。
2種類の指小辞があるわけですが、違いは特にないようです。例えば"Haus"「家」には"-lein"がついた"Häuslein"と、"-chen"がついた"Häuschen"の両方で用例が見つかります。
ただ、もとの単語のつづりや発音の関係で"-lein"か"-chen"のどちらかに限定される例もあります。例えば、"-g"や"-ch"で終わるもとの語は"-chen"との相性が悪く"-lein"がつきます(例 "Ring-lein"「小さな指輪」)。
ドイツ語"Bauer"「農民」に指小辞がつくと・・・?
さて、ドイツ語の指小辞を概観したところで興味深い例をひとつ。
"Bäuerchen"という単語があります。
もとの単語は、"Bauer"で意味は「農民、農夫」という意味です。
ということは、指小辞"-chen"がついて「小農民」? 「ちょっとした農民」? とかの意味になると推測できますね。
もちろん辞書には、その用例もあります。
しかしGoogle等で検索してみると、「農民」とは全く関係の無い検索結果が出てきます。
実は"Bäuerchen"には、「げっぷすること、げっぷ」という意味があるのです。
「農民」に指小辞"-chen"がついた単語の意味が「げっぷ」とはどういうことでしょう?
語源を調べてみると、以下の情報が見つかりました。
From an onomatopoeia for burping like English burp itself. This form *bur (or similar) was then associated, possibly at first in a non-diphthongizing dialect, with the word Bauer (“farmer”), partly due to the perception of farmers as unmannered people.
対訳:英語burpと同様、げっぷを表す擬音語から。この*burという(または類似の)語形は恐らく初めは二重母音化をうけなかった方言であったが、農民は行儀が悪いという認識があった為にBauer「農民」という単語と関連づけられました。
(参照:en.wiktionary)
もとは擬音語由来だったのがイメージで関連付けられた「農民」はたまったものではないですね。
ただ、"Bäuerchen"は主に赤ん坊のげっぷを指し、大人のそれにはあまり使われないようです。
より一般的には"Aufstoßen"や"Rülpsen"という表現があります。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、ドイツ語の指小辞について調べてみました。
ちなみにドイツ語の名詞は、男性・女性・中性という3つの文法性に区別されますが、指小辞"-lein"と"-chen"のつく名詞は必ず中性名詞です。
上の例では"Frau"「女性」は意味通り女性名詞ですが、"-lein"がついて"Fräulein"になると中性名詞となるのでご注意を。