ハロー。Yumaです。
皆様、今日も楽しんで語学してますか?
「桃源郷」という言葉があります。出展は、中国史上で代表的な詩人・陶淵明の「桃花源記」という作品です。
桃の花の林に迷い込んだ漁師が、外界から隔絶された平和で豊かな村を偶然見つけます。ところがその後改めて同じ場所を訪れようにも、ついぞ辿り着くことは叶わず、そこから俗世から離れた別世界、理想郷のたとえとなりました。
ユートピアは、どこにある?
桃源郷と同じ意味で用いられるのが、ユートピア(英:utopia)です。
こちらの出展は、英国の人文学者であるトーマス・モアによる著作で、その名も"Utopia"というタイトルです。
架空の国であるユートピアの素晴らしい体制などを対照として記述することで、当時の英国の現状を批判するという内容であったため、こちらも理想郷とか理想社会を指す言葉として用いられます。
本の中で、ユートピアは赤道以南にある島に存在するとされていたそうですが架空の国ですのでもちろん存在はしません。
そもそも、ユートピアの語源が「どこにも無い場所」から来ているのです。
It is literally "nowhere," coined in Modern Latin from Greek elements: ou "not" + topos "place".
文字通り「どこにもない場所」であり、ギリシャ語の要素ou「無い」+ topos「場所」を元に現代ラテン語風に造語されました。
(参照:Online
etymology dictionary)
理想郷、理想社会を説くために造られた言葉の原義が「どこにも無い場所」だというのは、何とも皮肉がきいた命名だと思います。
ドイツの地名"Hintertupfingen"はどこにある?
架空の地名は、桃源郷やユートピアのように必ずしも理想的な場所であるとは限りません。
その一例が、ドイツの地名"Hintertupfingen" [ヒンタートゥプフィンゲン]です。
何となく実在しそうな名前に聞こえますが、試しにGoogle Mapsで"Hintertupfingen"と入力してみても候補に挙がるのは似た地名のみであり、実在しない地名のようです。
では、この架空の"Hintertupfingen"とは一体どんな場所なのでしょうか。
ドイツ語版Wikipediaにこの地名についての解説があるのですが、それによると「非常に小さく辺鄙な場所であることを示す架空の地名」(独:ein Ort sehr klein ist und abgelegen
liegt.)とのこと。
桃源郷やユートピアのような理想郷のイメージではないようです。
Der Begriff Hintertupfing(en) ist seit etwa 1920 gebräuchlich und vor allem in Süddeutschland verbreitet. Lutz Röhrich übersetzt die Redewendung „von Hintertupfingen sein“ mit „ein rechter Hinterwäldler sein“ und mit „in einem Ort wohnen, der fernab von jeglicher Zivilisation liegt“.
対訳:Hintertupfing(en)という語は1920年頃から見られ、特にドイツ南部で広く普及しています。ルッツ・レーリヒ(※注:ドイツの民俗学者)は“ von Hintertupfingen sein「Hintertupfingen出身である」“というフレーズを、「かなり時代遅れである」とか「いかなる文明からも遠く離れた場所に住んでいること」と訳しています。
(出展:de.wikipedia.org)
ルーツは定かではないものの、100年ほど前から存在する語のようです。しかし何ともネガティブなイメージの土地です。
なお、ドイツの玩具メーカー・Gebrüder
Faller GmbH(ファラー兄弟商会)という会社からは鉄道模型用に"Hintertupfingen"駅の組み立てセットというものが販売されているそうです。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、架空の土地の名前について調べてみました。
桃源郷やユートピアは、どちらも理想郷を指す代名詞的な存在として知られますが、中には何もないような辺鄙な場所を指す、架空の地名というのもあるのですね。
今後も興味深い発見があれば当ブログで紹介していきたいと思います。